色恋戦線【ars K.N】 (ページ38)

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「オレ、大野さんと組んでたまに歌ってんの」
「大野さんって...大野先生ですか？」
「うん。オレはギターだから歌ってるのはほぼアッチだけど」

キミが「そうなんだ...ギター...」と呟く。

目を伏せたキミに「何年か前に文化祭の後夜祭で歌ったら、何か好評でさぁ」と言うと、その目をオレに向けた。

「どんな感じなんですか？」
「まぁザックリ言うと、ゆず系？」
「コブクロじゃなくて？」
「あー、そっちもアリ。どっち系でもいけるよ」

どっち系にしても、大野さんがちゃんと合わせてくれる。
あの人、本気で歌やってみたら良いのに。
あ、オレがプロデュースして印税稼ぐのも良いな。

「今年も大野さんの都合が合うみたいだから出ようかって話になってさ」

馬鹿な事考えてたら、何か面白くなっちゃったオレを見てるキミは何故か

ほんの少し、困ったような笑顔。

「ま、出るなら新曲でも歌うかーと思ってその曲作り」
「先生、CD無いんですか！？」
「フハハッ！そんなのねぇよ」
「何でも良いから音源は無いんですか！？」
「んー...生徒が撮った動画くらいじゃない？」

結構、みんなスマホ向けてたよな。
YouTubeとかにアップされてたらどうしよ。
そこから大野さんが話題になったらどうしよ。
夢の印税生活？

また馬鹿な事考えて、一人面白くなる。

「今年の後夜祭に出るんですよね？」
「うん。その予定だけど」
「私も観に行きたいです！」

キミが目をクリンと開いて、ちょっと興奮気味に言う。

「後夜祭って、生徒と関係者以外入れないよ？」
「えー...先生の関係者って事に出来ませんか？」
「ンフフ。ま、考えといてやるよ」
「やった！いつでしたっけ！？仕事、早番にして貰わなきゃ！」

...何だよそれ。
小さくガッツポーズしてるの、見えてるし。
クソ可愛い。

「ねぇ先生、どんな歌詞書いてるんですか？」

クソ可愛い奴が、下書きノートを見ようとするから「やだよ」と笑って鞄に片付ける。

「ケチ」
「うっせぇ」

無防備に可愛い顔を連発する結城を見てると、ふと思い出した。

「あ、そうだ。お前さぁ」
「はい？」
「酒飲むといつもあんな感じなの？」

あの結城は、どう考えてもよろしくない。
オレがまだ若かったら、あんな子簡単に持って帰れる。

...まぁ、若くなくても持って帰れるけど...。

いや、違う違う！
若いヤツは手当り次第、誰とでもそーゆーコトしようとすんだから！

もっと危機感を持ちなさい！
って、オレは保護者か。