色恋戦線【ars K.N】 (ページ39)

今日:3 hit、昨日:28 hit、合計:1,644,680 hit

２８←1.11 ページ39

「あんな感じ...とは？」

キョトンとした顔で、オレをジっと見てる。

「いや、何かフラフラして妙に甘ったれてるって言うか」
「甘...っ！？」

あ、赤くなった。
自覚無しか？
タチ悪ぅー、もしや小悪魔気質？参ったな。

「オトコとも飲み会とかしてんの？」
「大学の時はたまにありましたけど...」
「ふーん...」

絶対、コイツのコト狙ってるオトコ居たんだろうなぁ...。
そんな事にも本人は気付かず、無防備に笑ったりしてたんでしょ。

立ってる結城を、頬杖をつきながら見上げると「え...何ですか？」ってちょっと不安そうな顔をする。

「お前、危ないんだよな」
「危ない...」
「アレ、何されても文句言えない状態よ？」
「なっ！？何されてもって...」

美味しそうだと、キミの肩を抱き寄せてしまったあの瞬間を思い出す。
もし相手がキミじゃ無かったら、あの雰囲気はキスくらいなら軽くしちゃってたんじゃないか？と思う。

「今まで何もされなかった？」
「はい、いつも女の子と帰ってたし...男子と二人では飲んだ事無いですから」

その言葉に、やけにホっとした。
しかも、結城を食おうとしてたオトコ達はさぞ残念だっただろうなぁ！なんて事まで考えて笑いそうになる。

その、何だ、優越感にも似た気分を押さえつつ。

「そっか、じゃあお前はこれからもオトコの前では飲まない方が良いかもね」
「...え？」
「ってゆーか。もう、オトコの前で飲むな」

言ってすぐ、ヤバ...と思った。
今のは完全に、単なる『束縛したがり彼氏』だ。
しかも、彼氏でも無いのに。

キミに何か言われる前に誤魔化さないと、とカフェカウンターに目をやったら行列が出来てる。

「お前、ここでずっと油売ってて良いの？」
「え？」
「加藤くん、大変そうだけど」

振り返ったキミは大慌てで「戻ります！」と、頭を下げ走ってカウンターへ戻って行った。

すぐ加藤くんからちょっと怒られたみたいだけど、ヘラヘラしてる。
そんなキミに、加藤くんも呆れたように笑った。

少し、胸がチクンと痛んだ。

嘘だろ。
嫉妬？
やめてよ。

「......」

ノートをもう一度開いて、歌詞を考える。
色んな言葉が溢れて来て逆にまとまらない。

一息つこうとスイカジュースのストローを咥えたら、もう無くなってたらしく派手にズズズー！と音が鳴った。

「ごめんなさい！」

周りのお客さんに謝ってると、キミが笑いながら「捨てときますね」と

空になったコップを片付けてくれた。