【朔間凛月】again (ページ8)

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憂鬱な昼２ページ8

気を取り直して今日着る服を選ぶ。といっても、その服を見るのはいつも義親と病院の専属の医師だけなのだけど。今日は怪盗がいるっていう謎の展開だが。

これにしよう、そう決めて服を一着選び取ると、それを見に来た怪盗がベッドの上を這い蹲ったまま覗き込んだ。

「え、それはダサい。アンタ服のセンス無いんじゃない？」

すごい目をされた。

そして私はすごく傷ついた。

黙ってその服を仕舞うと愉快そうに顔を歪ませたので、今度こそはと選んでいると、途中で「あ、それ」という声が聞こえてしまったため、反射的に取ってしまう。

その服は白のワンピースに紺色の刺繍がされたものだった。

この秋の時期この服は似合わないんじゃと思ったが、彼はそれが良いと駄々をこねた。いや、本当は駄々なんかじゃなくて、ただの意見だったのかもしれないが、私には何故か私の服に対して駄々をこねている人にしか見えなかった。

「そういえば、貴方名前はなんていうの？」

そう聞けば、彼は大変機嫌が悪そうに顔を顰めた。

何が不満だったのか分からない私は、名前を聞かれたのが地雷だったのかもしれないと思い、何事も無かったかのように着替えようと思っていたが、不機嫌そうにゆがめた唇で彼は「りつ」と名乗ってくれた。

「勇気凛々とかの凛に、満月とかの普通の月」
「勇気凛々って言葉で自分の名前を説明する人はじめて見たかも」

紙に言われたとおりの文字を書いてみせると、肯定するように頷いた。

「凛月……。なんか良い響きだね」
「あんたは？」
「知ってるでしょ、怪盗さん」

養子のことを知っているのだから私の名前も把握済みのはずだ。
しかし、彼は横に首を振った。

「……A」
「へぇ～」

興味なさそうに返事されたので、少し腹が立ったが、すぐに「良い名前だねぇ」という声が聞こえて、私は僅かに微笑んだ