肆拾弐*刀との距離 ページ43
そして、襖の向こうに目をやった瞬間、犯人はスライディングで登場した。
「主!!目が覚めたと聞いて…!」
長谷部。来たよ長谷部。機動おばけかよ。
肩にはこんのすけが乗ってるし。
いつの間にセットになったんだよ。
急に現れた長谷部さんに、清光はびくりと肩を揺らした。
「長谷部!?薬研…何で分かったの?」
「何となくだ」
さらっと答えた返事は答えになっていない。
「審神者様ぁぁ!!心配したんですよ!?」
「ごめんね、こんのすけ。私、元々はこんのすけを探してたんだけど」
「?僕に何か用でもございましたか?」
「うん、あのね――…」
私は満面の笑みを浮かべて、こんのすけの頬に手を伸ばした。
薬研は現場にいたため、私の言わんとしてることを悟りすでに苦笑している。
長谷部さんと清光はただ私達を見ていた。
そんな中、私はこんのすけの頬を思い切りつねった。
「手入れでは打ち子を使うなんて一切言ってなかったよねえぇぇぇ!!??」
「ひええぇぇぇ!!ほうひわへほはひはへうぅぅぅ!!!(申し訳ございません)」
まぁ彼も怪我人だ。
ずっとつねる訳にもいかず、すぐに手を放した。
こんのすけは涙目になりながらその場に伏せた。
「うぅ〜…だって、審神者様の霊力はどのくらい耐えられるかを調べるよう政府から仰せつかっていたんですよぅぅ」
「あ〜あのクソ政府…人を実験体みたく使いやがって」
つまり全てにおいてこんのすけが悪い訳ではない。
少し申し訳なくなり、私は頭を撫でた。
こんのすけは困惑したように私を見つめてくる。
その後も、次から次へと手入れ済みの刀が私の部屋に集まってきた。
加州清光、へし切長谷部、燭台切光忠、薬研藤四郎、乱藤四郎、厚藤四郎、鯰尾藤四郎、骨喰藤四郎、五虎退、前田藤四郎、一期一振、今剣、岩融、石切丸…
一週間で、この刀達との距離を詰めることに成功したわけだが…。
「この本丸には、まだ沢山の刀が居るんだよね」
襖の向こう側を見つめながら呟くと、清光が答えた。
「そうね。特に、粟田口なんて沢山いるし。他にも刀派は揃ってるとこがある」
「まぁ何だ。粟田口派は俺っち達に任せておけ」
「いち兄もいるし、あっという間に信じてくれるはずだよ!」
薬研と乱も続いて慰めるかのように言ってきたが、私は首を振った。
「いや、そこは私が何とかする。だから、皆は今まで通り、身内を守ってあげて」
見回しながら言うと、長谷部は「主命とあらば」と笑いかけてきた。
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作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年8月28日 23時