肆拾壱*ハラキリ不可避? ページ42
最初に視界に入ってきたのは…
「ああ、目が覚めた?良かった」
眼帯の彼だ。名前は確か……ああ〜……。
「僕のこと、覚えてる?」
「……ハラキリした方がいいですかね」
「覚えてないんだね。ハラキリはしなくていいから、聞いてて」
そして彼は改めて名乗った。
思い出した。私に夕餉を運んできてくれた刀だ。
「光忠さん、久し振りですね」
「そうだねぇ。元気そうで何よりだよ」
そう言って微笑んだ彼はまるでジェントルメン。
格好よすぎてもう顔近づけないで。
少し重い上半身を起こすと、今いる部屋が審神者部屋であることが分かった。
「私、倒れたんですよね。誰がここまで……」
「長谷部くんだよ。彼、三条の刀達を夕餉に呼びに行ったんだけどね、その先で丁度君が倒れたんだって」
「ははあ…あの声は長谷部さんでしたか」
何だか申し訳ない。
あんなイケメンに不細工を運ばせただなんて、これはもう…。
「迷惑かけたらハラキリ」
「何その御法度みたいなの。ハラキリしたら殴るよ?」
「介錯よりも遥かに辛いですね、それ」
爽やかに告げられた言葉に背筋が震えた。
「そこまで元気なら大丈夫だね。長谷部くん達を呼んでくるよ」
「え、いえいえそんな……わざわざ足を運んでもらうような人間じゃないですよ」
「まぁまぁ。彼ら、主のことをすごく心配してたんだよ」
と言い残して出て行った。
彼ら……か。彼らって誰ら?←
1人で首を傾げていると、突然襖が勢いよく開け放たれた。
何事かと目をやると、立っていたのは――
「っ!!主!良かった、大事ない?何処か悪いところとか…!」
「加州の旦那、ちょいと落ち着け」
加州清光と薬研藤四郎だった。
え、名前?さっき薬研のアニキが呼んだから思い出した。
「き、清光…心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」
「うん…本当に良かった」
笑いかけると、彼は頬を赤く染めた。
こんな不細工の笑顔でそんな顔してもらえるとは思わなんだ。
「大将が倒れたって聞いたときは、肝が冷えたぜ」
「本当だよ…誰かに斬られたのかと思った」
「あははは、まさか。私こう見えて図太いし、大量出血しても戻ってくる自信あるよ!」
どんっと胸を叩くと、二振りは声を揃えて「それはもう人間じゃない」と首を横に振った。
3人で笑い声を上げると、遠くからドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。
「お、来たぞ」
「え、誰が?」
薬研は正体が分かったようだが、私と清光は顔を見合わせた。
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作者名:ヒタリ | 作成日時:2018年8月28日 23時