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八ノ巻 蹴鞠 ページ8

「いくぞ赤司!」

「臨むところだ。」

「ちょっと二人共! 蹴鞠は勝ち負けを競う遊びじゃないっすよ!」

五人で輪になって蹴鞠を始める親王様方。それは一番近くの渡殿から見守る。青峰様が打ち上げた鞠

を赤司様が受け止めた。一度低めに蹴ると次は黄瀬様へと鞠を回す。

「よし! 赤司っちの鞠回しはやっぱ最高っすわ!」

「そうかな。」

「よっと! 緑間っち!」

東宮様を筆頭に順調に鞠が回っていく。華々しく楽しげなあの中に私が男だったら入れたのだろう

か、なんて馬鹿なことを考えてしまう。男だったら男だったで宮中で親王様方と関わることは難しい

のだ。とりあえずは同じ宮中にいれたことに感謝しよう。

「青ち〜ん。」

「おっと⁉ 紫原! 渡すのもう少しどうにか」

「青峰くん!」

「うお⁉」

突然掛けられた少女の声に思わず青峰様は体勢を崩す。落ちてきた鞠を蹴ったはいいもののそれは真

っ直ぐと私へ向かってきた。今度はさっきと違って来るのが分かったし速度が遅かったのもあって即

座に横に避ける。その直後、渡殿の中に鞠が転がり込んだ。

「あ! すまねえ!」

「大丈夫でございます。」

慌てて駆け寄る青峰様に続いて他の親王様も私に向かって走り出される。渡殿に転がる鞠を拾ったと

ころで渡殿に全員が揃われた。

「大丈夫⁉ 本当にごめんなさい!」

親王様が渡殿の上に上られたところでもう一つの人影が私達へと近づく。春らしい紅の衣に身を包

み、その髪は陽の光に照らされて桜のように輝いていた。私と同い年ほどの少女が申し訳なさそう

にこちらへ駆けてくる。

「いえいえ。何もなかったので大丈夫です。」

「よかった……って青峰くん! 漢文の先生の授業を忘れて蹴鞠してたの?」

「げっ。」

「青峰、またお前は授業をすっぽかして遊んでいたのか。だからお前はダメなのだよ。」

「青峰っちただでさえ漢文苦手なんすから授業くらい真面目に受けたらどうすか?」

「青ちん漢文苦手なの? かっこ悪〜い。」

「青峰、授業を忘れた挙句十六夜に向けて鞠を蹴るとは感心しないな。」

「ほら青峰くん、早く麗景殿に戻るの!」

「だあもー分かったっつーの!」

全てを諦めて青峰様は渋々麗景殿の方へ渡殿を歩いていく。その後ろをあの少女もついて行くかと思

えば私の方へと振り返った。

「青峰くんがごめんね。私、桃井。青峰くんの乳兄弟なの。お詫びがてら、お菓子でも食べない?」

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- とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。更新頑張ってください! (2020年10月5日 14時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ソナタ | 作成日時:2020年9月25日 21時

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