【成宮】極楽蝶花【鳴】 (ページ22)

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「成宮鳴って･･････」俯いたまま微笑んだ鳴。

握っていた拳を開き、練習着の膝で両手の汗を拭う。

「え？間違えてないでしょ? 」

「間違えてないけどね
フルネームは無いかなって･･････」

クスクス笑った彼女は言った。

「鳴くんって呼んだら、吉沢先輩が怒るんだ」

吉沢先輩･･････そう呼んでる事で
吉沢よりも年下だって事が解った。

でも、彼女の声で吉沢の名前を言われるのは大打撃だし
況してや怒るなんて、ノロケにしか聞こえない。

鳴を支配していくのは、不快以外の何物でもなかった。

「へ～。よっさん亭主関白なんだ」

不快だ。それでも、まだ一緒にいたい。
気持ちが混濁し過ぎて頭が可笑しくなりそうだ。

でも一緒に居たくて、吉沢の元に行かせたく無くて
鳴は平然を装い俯いたまま笑顔を浮かべる。

「何それ～」笑った彼女は、衝撃的事実を言い放った。

「もうね、とっくに別れてるよ? 」

―― ナニソレ?

別れてるの? 俺の名前を呼ぶの怒る癖に?

あんなに仲良く話してる癖に? ――

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