【成宮】極楽蝶花【鳴】 (ページ14)

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ここまでは本当にいつも通り。

なのに今日はいつもと違う。

いつもなら、その上は
白いセーターにマフラーを巻いているのに･･････
今日は違う。

鳴は彼女から目を反らし
吉沢の姿を、目を血走らせながら必死に探す。

実質引退している筈の三年。

それなのに殆どが毎日練習に顔を出している。

吉沢も例外でなく毎日顔を出して居る一人だった。

見付けた吉沢は、両手に握ったトンボの柄に凭れ
三年の平井翼と談笑をしながら練習風景を視察してる。
と言った様子だ。

服装は練習着。
平井も同様だが、上には赤いジャンパーが羽織られている。

この赤いジャンパーは稲実野球部の指定ジャンパーで
軽いのに保温効果抜群の優れもの。

「やっぱり･･････」呟いた鳴に樹が問う。
「何がですか? 」

それでも樹の声は聞こえない。
けして無視をしている訳ではなく、耳に入らないのだ。

トンボの柄に凭れ掛かる吉沢。

時折寒さに身を縮ませ、両手を擦り合わせている。

寒いのならジャンパーを着れば良いと思うかもしれない。
でも着れないのだ。

何故なら彼女が制服の上から羽織っているのは
吉沢のジャンパーなのだから。

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