【成宮】極楽蝶花【鳴】 (ページ13)

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フラ～ッと外周に目を向けた鳴。

これは一年の時からの癖の様な物だ。

無意識に彼女が来ていないか確認してしまう。

それなのに今まで
交際していた筈の吉沢と彼女が接して居る所を
一度も見た事が無かったのは、奇跡に近い。

鳴の左手からスルリと落ちたグラブ。
ドサッと音を発て、乾いた風に砂埃が舞った。

鳴を呼ぶ樹の声は聞こえない。

樹がグラブを拾い上げた。
だが手渡されてるのにも気付かない。

鳴は吊り上がった大きな一重の目を更に大きくして
呆然と立ち尽くしている。

外周に目を向けた瞬間に見付けた彼女の姿。

その瞬間にグラブを持つ手の力が抜けた。

まるで行き場を無くしたかの様な両手は
太股の横でだらしなく、ダラリとブラ下がっているだけ。

握りもしなければ、開きもしない。
全く力の入っていない中途半端な手だ。

鳴が見たもの。

それは吉沢と仲良く話している彼女の笑顔･･････
では無い。

いつもの様にフェンス越しに一人で立つ彼女。

靴は枯れ芝で見えないのは、いつもの事。

いつもの様に紺色のソックスを履き
その上は、紺地に緑のチェック柄のプリーツスカート。

スカートは制服のだ。

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