17.二人きり ページ17
「黄瀬くん、足大丈夫?調子悪くない?」
「......はいっス」
「ほんとに?違和感感じたら、無理しないでね」
「...うん」
あの日から、黄瀬くんが妙によそよそしい。
女の子だから気を遣ってるとかそういう類ではなく、まるで子犬のような目で見てくるのだ。前みたいにベタベタしろとまではさすがに思わないけど、もう少し普通に接したいというのが本音である。
「あの、Aっち」
その距離を感じさせる態度に落ち込みながら、とりあえず部室に置いてきたノートを取りに行こうと歩き出したとき、後ろから聞こえてきた呼び止める声に振り向く。すると、そこには緊張した表情した黄瀬くんが立っていた。
「どうしたの?」
「今日、放課後用事とかある?」
突然の質問に首を横に振って、ないよ、と言えば、一瞬口許を緩めた黄瀬くん。それから、覚悟を決めたようにキュッと口を結んでから、ゆっくりと口を開いた。
「じゃあさ、一緒に帰ろ」
「全然いいけど、いつも一緒に帰ってる...」
「ーーーそうじゃなくて!ふ、二人で!!」
必死に、ふたり、ふたりと連呼しているのを見て、なんだか犬みたいだなと思いながら頷くと、黄瀬くんはパァッと花が咲いたように笑った。そして、約束ね、と嬉しそうに叫んで練習に戻っていく背中を見送りながら、さっき言われたことを口に出して、頭を少し整理してみる。
「黄瀬くんと二人で帰る...、ふたりで帰る。ふたり、きり?」
ーーーボンっという音が自分から聞こえた気がする。いや、絶対聞こえた。
二人きりなんて、わたしの心臓がどこまで持つんだろうか。それに、なにを話せばいいんだろう。
「A、どうした?顔が真っ赤だぞ」
「体育館が暑くて...!」
わたしは、心配そうに顔を覗き込んできた笠松先輩にそう言うと、いそいで部室へと駆け出した。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時