18.幼馴染み ページ18
帰るといってもどうせ駅までと思いきや、今日は週末だから黄瀬くんも実家に帰るらしく、そのまま長い電車に揺られ、成り行きで二人でマジバにやってきた。途中、話しかけてくるファンとかにも終始完璧な笑顔で、今更ながらモデルの本気を見た気がする。
「Aっちもバニラシェイク好きなの?」
「あ、うん」
黒子っちと同じっスね、と笑いながらメニューを眺める黄瀬くんがさり気なく金色の髪の毛を手でいじる。わたしはそれを視界の隅に入れつつ、そっと窓に視線を移した。
「じゃあ、オレはこれにしようかな」
二人きりの時間が長くて慣れたのか、今は案外最初ほど気まずくない。メニューにあるお茶を指差し、レジに向かっていった黄瀬くんを目で追いながら、わたしは心の中でガッツポーズをした。いいぞ。この調子だ。
少し誇らしい気持ちで、テーブルの上に広がっているメニューを片付けていると、すぐ真横で止まった足音と暗くなった視界に驚いて顔を上げる。すると、そこには見覚えのある人物が珍しく双眸を見開いてこちらを見ていた。
「ーーーあ?テメェなにしてんだよ」
「え、あっ!大ちゃん!?」
わたしの向かいにある鞄を見て、小さく「黄瀬か」と呟いた大ちゃんは、それから乱暴な仕草でその隣に座る。
「なんでここにいるの?てか、なんで座ってんの?一人?」
「一度にそんなに聞くんじゃねぇよ。部活帰りで腹減ったからいるに決まってんだろ」
「お姉ちゃんは?」
「最近料理研究するとかで先帰ってんだよ」
「じゃあ、上達するかな」
「知らね」
そう言って、大ちゃんは大きな欠伸をする。それからハッとしたようにわたしを見て、ニヤリと笑いながら手を伸ばしてきた。
「お前、なんか食いモン持ってねーの?」
「......持ってない」
「オイ!テメェ、今何隠した!」
鞄から今日の昼食のあまりのパンが見えていたらしい。今渡したら、おばさんが作った夕飯が食べられなくなると、急いで隠したのを見て、大ちゃんがテーブルに身を乗り出して、必死の形相で更に手を伸ばしてくる。大きな手がわたしの鞄に到達しそうになった瞬間、すぐ近くにコップがダンと大袈裟なくらい強い力で置かれた。
「...なにしてんの、青峰っち」
その大きな音といつもより少し低い声に大ちゃんとわたしの動きが止まる。
「Aっち。はい、バニラシェイク持ってきたっスよ」
のっそりと二人同時に顔を上げると、何故かふてくされたような顔をした黄瀬くんと目が合った。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時