【東京喰種】目が覚めると腰から何か生えてた話、第2部 (ページ6)

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すべての質問にイエスとだけ答え続けた私は、30分後に解放された。

「最後になってしまったが、息子の政だ。ドイツの方に行ってたんだが、先程帰国してね」

顔はどことなく似ているところもあるが、雰囲気はまるで赤の他人のように違う。

息子だとは思わなかった。

『渡来A一等捜査官です』

「和修政、準特等だ」

準特等がやけに強調されたように聞こえたが、気のせいにしておこう。

「では、失礼します」

『失礼します』

一礼し、局長室から出ると、空気を一気に肺へ入れ込む。

あの空間で生きた心地はしなかった。

「お疲れ様」

『本当にですよ』

それだけの会話を交わし、一歩後ろを着いていく。
道中、やはり何かしら指は刺されたが、有馬さんの背だけを見つめて歩いた。

大きく、父の姿を連想させた。

有馬さんはどことなく父に似ている。
人間離れした身体能力はないけど、大きな背中だった。

不思議と、前よりは帰りたいという気持ちは薄くなっている。

薄情、なのだろうか。

「さあ、帰るよ」

『へぶっ』

突然止まるものだから、凝視していた背中に思い切り衝突してしまった。
おまえに変な声もでた。

気づけば目の前は執務室の前。

執務室には相変わらず誰もおらず、鞄を持ってすぐに廊下へ出た。

ギギィ、と重い音を立てて閉まる扉に鍵をかける有馬さん。

ゆっくりと振り返ると、その鍵を私の目の前に差し出した。

『えっと…？』

「鍵、預ける」

単語だけ並べればいいと思ってるのか、この人は。
日本語をもっと学んだほうがよろしいかと、なんて言えないけど。

執務室の鍵は班長、副班長のみ所持が許される。
例外を除いた書記以外を含め、その他班員は執務室に入るためには班員、副班長を呼び出さなくてはならない。

この班の班長は有馬さん、副班長は…

まさか。

「宇井は移動した。副班長を頼む」

心の黒いモヤが一気に倍増した。

会わなくて済む。
そう、だから気が楽になるはずなのに。

正常に働かない脳みそはそのまま鍵を受け取っていた。