【東京喰種】目が覚めると腰から何か生えてた話、第2部 (ページ2)

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真面目に説明を受け直すと、彼も人工の喰種で実験の被害者だという。

当の本人は20年分の記憶を失っていて、ここ数ヶ月の事しかわからないらしい。

「え、あ…」

弟、と紹介された彼は私の目を1秒しか合わせてくれない。

自己紹介もできないのか。

「佐々木琲世だ」

『よろしく、ハイセ…で、いいんですか』

「はい…」

ハイセは弱々しくも返事はした。
意思疎通することはできるのか。

「とにかく、全部に署名して。そうしたら捜査官に復帰してもらうから」

『あ、の…班は…』

有馬さんの所有物ということなら、0番隊だろう。
しかし、そこには顔を合わせてはいけない人がいる。

「俺の班だ」

『…わかりました』

私は渡されたボールペンを握り、書類に名前を書き続けた。

有馬さんは途中でどこかへ行ってしまった。

すぐ戻るといったが、果たしてどうなのか。

『ハイセ』

「は、はい」

相変わらずハイセは下を向いて返事をした。

『本当に20年分記憶がないの？』

「ない、です…」

私と一緒、とまでは行かないが、これだけ怯えるのも無理はない。

ある日突然腰から何かが生えているのだから。

ハイセもきっとそんな感じなのだろう。

「Aさんは、どうしてCCGにいるんですか…？」

やっと私に話しかけてくれたと思ったら、こんな質問。

どうして捜査官を志したのか、ではなくてどうして喰種なのにっていう意味合いだろう。

『それしか無かった』

この世界に来て、それ以外生きていく道がなかった。

いや、もしかしたらあったかも知れなかったが、後悔はあまりない。

あんまり考えた事なかったけど、案外この生活を楽しんでる私がいた。
まだ3ヶ月の眠りからとけて2時間ほどだが。

「僕も…そうなるんですね」

ぽつり、そう呟いた彼の顔は見えないほど俯いていた。

慰めるほどの人生経験を積んでいないが、ここは声をかけないと。

『案外楽しいかもしれないよ』

なんて楽観的な言葉なんだろう。
自分で言って引いた。

でも、一方のハイセは私に微笑みを向けてくれた。

ハイセは楽な言葉が欲しかったのかもしれない。