◆倉持洋一・兄◆ ページ34
*アシュさんリクエスト*
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「おーにーいーちゃーん」
「あ?」
お正月休みで家に帰ってきても尚、5時には起きてランニングに行く我が兄。
そんな彼に、目が覚めた私も適当にジャージを着てこっそり後をついて行ってみた。白い息を吐きながら走り出そうとするお兄ちゃんに後ろからタックルのようにぶつかれば、何事だという顔で見つめられた。
「わりぃ。起こした?」
「いや、私もはしろっかなーと思って」
「はぁ?」
「ほら、正月太りヤバイし」
「あー…」
ほんとのとこは、久々に帰ってきたお兄ちゃんとちょっとでもいいから話したいって理由だけど。
素直に言えない私は軽くお腹を叩いた。
お兄ちゃんは私の全身をじろじろ見て「ひゃはは、確かにちょっと丸っこく…」と納得しかける。私は無言でお兄ちゃんのお尻に蹴りを入れると走り始めた。
「いってぇな!お前が言ったんだろ!」
「はいはい」
「ったく可愛くねぇ…」
お兄ちゃんはすぐに追いつくと、私の隣を並走する。私も結構足は速いほうなんだけど、やっぱりチーター様には敵わないらしい。
「途中でへばったら置いてくからな」
「へばんないし!…っうわ!」
「………おい」
お兄ちゃんに怒っていると、躓いてバランスを崩す。
それをいち早く感じ取ったお兄ちゃんは、さっと私の腕を掴んで転ばないように支えてくれた。その手が思いの外力強くて、やっぱ高校球児なんだなぁとか思ってしまう。
「…っぶねーな…気をつけろよ」
「あはは 面目ない」
苦笑いで起き上がると、私のお腹がグルルーっと鳴る。思わずお腹をおさえると、お兄ちゃんがブハッとふきだした。
「ひゃははは!!」
「うるっさいなぁ…」
「しょうがねぇから、駅前のコンビニまで走ったら兄ちゃんがなんか奢ってやるよ」
「マジで!」
「ひゃはは!ダイエットは?」
「一時中断」
ちゃっかりしてる私にお兄ちゃんは「バーカ」と笑って頭をガシガシ撫でると「ほら、行くぞ」とまた走り出した。
いつの間にか大きく開いてしまった歩幅。
いつものペースなら私はとうにおいていかれている筈だけど、何気に優しいお兄ちゃんは、いつもよりゆっくりペースで私に合わせて走ってくれた。
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◇いつでも隣で足並み揃えて◇
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