◇小湊兄弟・真ん中◆ ページ33
*琉生さんリクエスト*
.
「いらっしゃいま…うわぁ」
「よ」
「わぁ、こういうところなんだ」
休日、バイトに勤しむ私の元に現れたのは、まさかの亮ちゃんと春ちゃんで、思わず営業スマイルも忘れて顔をしかめる。
春ちゃんならまだしも、亮ちゃんには知られたくなかったから黙ってたのに。
「似合ってんじゃん割烹着」
「褒めてんの?」
「褒めてる褒めてる」
「棒読み!!!」
時給がいいからという理由で選んだバイト先はこじんまりした定食屋さん。可愛い制服とかそんなものもあったもんじゃないので、見られたくなかった。
亮ちゃんと春ちゃんをカウンターに通すと、春ちゃんが私の割烹着の裾を引っ張る。
「ごめん、秘密って言ってたけど、兄貴がどうしてもって…」
「いいよ春ちゃん、この人どうせ意地でも見つけ出すし…」
「お兄ちゃんにこの人なんていうのは、どの口かなー?」
「いった!痛い!」
「ちょっと兄貴!」
こそこそと話す私と春ちゃんに、腹が立ったらしい亮ちゃんは私のほっぺをぐいっとつねった。
私はヒリヒリ痛いほっぺをさすりながら注文を取る。
「A、お前なんでバイトしてんの?別にうち、お金ないわけじゃないじゃん」
「……春ちゃんも亮ちゃんも私立だし…自分で遊ぶお金は自分でって思って」
「ふーん」
「姉さん、意外としっかりしてるよね」
「春ちゃん?意外とって何」
ぼそぼそと理由を話せば、興味なさげに頷く亮ちゃんと私を見ながら嬉しそうに笑う春ちゃん。
照れくさくなって、厨房のほうへ踵を返そうとすると、「姉さん」と春ちゃんの声がかかる。
「なに?」
「今日バイト何時までなの?」
「8時」
「そこのコンビニで待ってるね」
「え、いいの?」
びっくりして聞き返す私に、「兄貴が言い出したことだから、いいんだよ」とクスクス笑う春ちゃん。亮ちゃんは春ちゃんの頭にすごい勢いのチョップをかます。
「痛い…」
「待たせたら先帰るから」
「うん…ありがと、2人とも」
先に帰るなんて、そんなことするわけない。
昔からずっと見てきた2人だもん。優しいってのは私が1番分かってる。私はニヤニヤ笑いながら小走りで仕事に戻った。
.
◇三人で並んで帰ろうか◇
.
800人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ