◆成宮鳴・兄◆ ページ23
*Fit's将軍さんリクエスト*
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「Aー、100円貸して」
「えーまた?いい加減ホームランバーぐらい自分のお金で買ってよ」
「いいからいいから」
「ちょっと!」
シニアの試合後に、お兄ちゃんをまっすぐ帰るようにと迎えに来た私は、一也くんとお兄ちゃんに引きづられて一緒に駄菓子屋に来た。
勘弁してくれと思いながらセーラー服のポッケから財布を出して100円玉を渡せばパッと受け取って「おばちゃんアイス〜!」と楽しげに叫んでいる。
「………返してよね」
「わかってるって」
「苦労してるよなAちゃんもこんな兄貴持って」
「……私、一也くんみたいなお兄ちゃんがよかった」
「はっはっはっ!俺兄弟いねえし、くる?」
楽しそうに笑っている一也くんは、小学校の時から知ってるけど、中3の今ではすっかり背が伸びてかっこいい、大人っぽい、素敵。
うちのワガママ兄貴とは大違いだ。
お姉ちゃんやお母さんにワガママ言えないからって私にばっかりいばり散らして…。
「鳴、Aちゃん俺の妹になりたいんだって」
「は?」
機嫌よくホームランバーにかぶりつくお兄ちゃんに、一也くんが笑いながら言う。お兄ちゃんは怪訝そうな顔で私を見ると、「マジで言ってんの?」と聞いた。
「……だって一也くんの方が絶対優しいもん」
「それはないね!一也性格悪いから!」
「おいコラ鳴」
「一也くんの方が背ぇ高くてかっこいいし」
「……あー!もううるさいな!」
背の高さに関しては言い返すことはできないのか、お兄ちゃんは「あーもう!」とキレると、自分の齧りかけのホームランバーを私の口に無理矢理突っ込んだ。
ほんのり赤い顔で私を睨むとずんずんと先へ歩いていく。
「ちょ、お兄ちゃん?」
「勝手に一也の妹にでもなってなよ!Aが小さい時オムツ変えてやったのも、怖い夢見て寝れなくなって一緒に寝てやったのも、いじめっ子の男子やっつけてやったのも俺なのに!あーあ!やってらんないよ!」
「………」
一也くんと黙って二人で顔を見合わせる。「お兄ちゃんさびし」と口を尖らせているお兄ちゃんに、ホームランバーを突き返す。
「お兄ちゃんの食べかけとかいらないし…」
「……」
「ごめん、一也くんの妹になりたいってのは…ウソ」
私がぼそりと言い返すと、お兄ちゃんはニヤニヤウキウキ嬉しそうに笑った。
「やっぱりAは、俺がいないとダメだよねぇー」
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◇大嫌いで大好き◇
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