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9.果実 ページ9

「シンドリア王国のマギ…いったいどんなお方なのだろう」

期待を抱くその言葉とは裏腹に、Aの秀麗な横顔は、木枯らしが枯れ葉を運んでいく秋の終わりを感じさせるような、そんな憂い帯びた表情だった。
よくある外賓のもてなしをし、皇帝である叔父からの褒美を貰い、初めての兄からの誘い、そして気になっていた"四人目のマギ"と思われる人物がいるシンドリア王国への留学の機会。
こんなに良い話が次から次へと歩いてくるなんて。きっと、どこかに罠が仕掛けられてあるに違いない。兄の誘いは嬉しいと感じたが、後々そう思うようになったらしい。


甲板の上で白龍は弟の後ろ姿を見た。手摺に片手を置き、果てしなく続く海の先を眺めている。その姿に何が惹かれたのか。弟の服装はいつもの煌人のものではなかったのだ。
詰め襟が特徴的の鮮やかな深緑の長衫に身を包み、長髪を後頭部でまとめ馬の尻尾のように垂らした髪型であった。彼の故郷に伝わる男の民族衣装だ。体に沿ったその衣装はさらに彼の背中を華奢に見せている。
なぜその身なりなのかは、白龍にはすぐに理解できた。
事実上人質として禁城にいたAは、シンドリア王国へ留学という形で向かう。つまり、彼はシンドリア王国へ人質として行くわけではない、と主張したいのだ。


ふと船上でその人物を見た瞬間、Aは視線をそらす。いとこである紅玉がいたのだ。なぜか乱れた出で立ちをしていた。

「遊女の娘の相手などまっぴら御免ぞ」

日傘を持った従者は主へ冷めた眼差しを送る。振り替えると兄の佇む姿が目に入ったため、Aはそちらへ歩み寄った。

「シンドバッド王とはいかなる人物か…」

と呟いた白龍の横へ、ご機嫌な様子で移動してきた弟に視線を移す。

「シンドバッド王と会ったんだろう」
「はい。お話も少しだけ」

咳払いをした。

「寛容な方でしたよ。さすが一代で国を築いただけあるなと。…けれど、少し危険な人物だと感じました」

白龍の顔が険しくなる。うつけな弟だが、これでも壮絶な幼少を過ごしたため、物事の裏側や陰謀は見据えることのできる洞察力は持っているはずだろう。きっとシンドバッドの影を察したのだろうと予想を立てていると、Aは白龍の耳へ唇を寄せてきた。

「私の肩に触れたのです。兄上もお気をつけください…!」

Aの故郷では、肩に触れるということは閨事への誘いという意味を持つという。心なしか頬を色づかせた弟を白龍は鼻で笑った。

10.報復→←8.伽藍


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Seere(プロフ) - とまとさん» こうして温かいお言葉を頂くと、やはり占ツクに戻ってきてよかったなと感じます!2年も経ってしまうだなんて自分でもびっくりです(*_*)完結するまで長い時間がかかってしまうかもしれません。ですが、ふと思い出した際にぜひ覗きにいらっしゃってください♪ (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - とまとさん» ありがとうございます!もしかしたらお気づきかもしれませんが、実はこの作品「古の魔法~」の設定を少しだけ模したものです。思い入れがある作品なので、とまと様が覚えてくださってとても嬉しい反面、ちょっぴり恥ずかしいですね(^.^) (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 他の作品ではありますが古の魔法のようにシリーズの時からSeereさんのファンです!占ツクに戻っていただいた時は本当に嬉しかったです!この作品を読みはじめて2年もたつなんて信じられないです…ゆっくりSeereさんのペースで作ってください。応援しています! (2018年10月13日 9時) (レス) id: 8aec95c110 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 流羅さん» とても嬉しい言葉を頂きました(*´-`)文章力はまだまだですが、もっと感動してもらえるような作品にするために頑張ります!応援ありがとうございます! (2016年12月28日 16時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
流羅(プロフ) - とっても面白いです!Seereさんの創る小説は全部語彙力があって、本当に感動するお話です。これからも頑張って下さい、応援しています…! (2016年12月27日 11時) (レス) id: 417529961c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Seere x他1人 | 作成日時:2016年12月24日 0時

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