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7.馥郁 ページ7

雷の柱を降らせるジュダル。それを軽々とかわすも、ついに前髪に触れてしまった。

「なんでそう避けることだけは得意なんだ!」
「兄上の槍より鈍いですよ」

焦げた毛先を見てAは「生まれて初めて火傷を負った」と呑気なことをぼやく。従者が火傷ではないと否定した。
逞しい腕で日傘をさす従者こそ南大陸の民族特有の浅黒い肌を持つというのに、視界を遮る髪を一束摘まむAの指は白魚のように白く、折れてしまいそうなほど華奢だ。

「死ぬぞ」
「誰が私を死なせるのです?」
「ハッ、お前よりガキだ」
「…では、やはりシンドバッド王ではないのですね」

口が滑ったと両手を頭の後ろで組む。その一連の動作を見逃すわけもなく、凛とした眼差しが射止めていた。
ジュダルよりも強き者を求めて、彼は何を企んでいるのか。

「四人目のマギですか」

ひらり、水面に青葉が落ちた。鯉達は気にもとめず舞い続ける。
細められたその澄んだ瞳は、確信の色を映していた。満足げに微笑みを浮かべたAは、今まで敬意を注いでいたはずのマギの戸惑いの声に耳を傾けず、背を向けて自らの御殿へ歩み始める。


ときは流れ、黄海沿いの賑わう港町にて。
女性は伝統的な民族衣装である白いドレスを纏い、男性は黒い上衣と白いゆったりとした下衣を合わせている。通りごとに建物の高さや造りが統一された街が海に向かって広がっており、屋台や売り歩きなどはなく、また、食べ歩きをしている者や立ち話をする者もいない。
Aはそんな街が好きだという。
洗練された美しい故郷。自由がないと他国から憐れに思われたり、気味が悪いと卑しまれたこともある。確かにそうかもしれない。けれど、彼にとってはその光景が当たり前であって、自分自身の美徳に添っているのだと。

大型船から降りてきた男を待ち構えた港で、Aは慎ましく膝を折り、嬉しそうな笑みを溢した。

「煌帝国先帝白徳を父、そして鄭氏を母に持つ、練Aと申します。シンドバッド国王陛下、お会いできて光栄にございます」
「こちらこそA皇子、丁重なお出迎えをありがとう」
「長旅でお疲れでございましょう。こちらが用意いたしました宴で御身を癒してくださいませ」

皇帝と諸侯との息子であったため、失言を許されないシンドバッドはしっかりと心構える。それでも目の前にいるのはまだ若き少年。萌えいずる花が咲いたような純粋無垢の笑顔は、緊張の糸を簡単に解いてしまった。

8.伽藍→←6.運命


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Seere(プロフ) - とまとさん» こうして温かいお言葉を頂くと、やはり占ツクに戻ってきてよかったなと感じます!2年も経ってしまうだなんて自分でもびっくりです(*_*)完結するまで長い時間がかかってしまうかもしれません。ですが、ふと思い出した際にぜひ覗きにいらっしゃってください♪ (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - とまとさん» ありがとうございます!もしかしたらお気づきかもしれませんが、実はこの作品「古の魔法~」の設定を少しだけ模したものです。思い入れがある作品なので、とまと様が覚えてくださってとても嬉しい反面、ちょっぴり恥ずかしいですね(^.^) (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 他の作品ではありますが古の魔法のようにシリーズの時からSeereさんのファンです!占ツクに戻っていただいた時は本当に嬉しかったです!この作品を読みはじめて2年もたつなんて信じられないです…ゆっくりSeereさんのペースで作ってください。応援しています! (2018年10月13日 9時) (レス) id: 8aec95c110 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 流羅さん» とても嬉しい言葉を頂きました(*´-`)文章力はまだまだですが、もっと感動してもらえるような作品にするために頑張ります!応援ありがとうございます! (2016年12月28日 16時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
流羅(プロフ) - とっても面白いです!Seereさんの創る小説は全部語彙力があって、本当に感動するお話です。これからも頑張って下さい、応援しています…! (2016年12月27日 11時) (レス) id: 417529961c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Seere x他1人 | 作成日時:2016年12月24日 0時

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