王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ9)

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隠れ姫⑤ ページ9

さく、さくと芝生を踏めばいい音がする。

これ人工芝なの？それとも音のなる芝？新種？金持ちなの？この学校は。

たぶんあっちだ、たぶんこっちだって、校内を歩き回りやっとの事で外への出口をみつけ、そこら辺にあった靴を履き、あたしは先程の石を探した。

『角度とかだと、ここら辺だと思うんだけど…？』

予想した場所の近くをうろつき、あたしは周りをキョロキョロと眺める。

荷物などは持ってきていない。

お荷物は愛しの音楽室の中。
もちろん鍵はちゃんと閉めた。

『あ、。あった…。』

外に出てさほど時間は経っていないだろうけど決して短時間でもない。

そこそこ時間をかけて見つけた"それ"は禍々しいような、でもどこか、悲しくて儚くて、ごめんねと言ってしまいたくなる雰囲気。

"それ"に吸い寄せられるように寄り添えば、誰かの声が聞こえてくるよう。

グレーの色を太陽の陽の光で反射させ明るくも見えるが、とてもいい物では無いとみた。

助けて。
どうして。
なんで。
あいつがいなければ。
自分がこんなに無力じゃなかったら。

纏う雰囲気に圧倒されてしまう。
この校舎は圧倒するものが多すぎる。

一日も経っていないのに、圧倒されすぎて吐き気さえ覚えた。

そんな、とてつもない雰囲気の"それ"は一体なんなのか？

1度後ずさり掛けた足をもう一度そろりと忍ばせ近寄ればなにか文字が刻み込まれている。

あぁ、「慰霊碑」だ。

その時あたしはなんとなく全てを察した気がした。

無数の楽譜。

その中にあった「ユニット曲」というファイルに挟まれた楽譜たち。

曲に名前がなかったり、誰が書いたかもわからない。
あるものはクシャッと歪んでいたり、あるものは途中で音符が途切れている。

そしてあるものは、その白い紙に紅く華を咲かせるように不規則に染みたモノ。
間違いなく、血痕だろうね。

あぁ、天国と思ったあたしは馬鹿だよね。

天国だ！と思ったあの音楽室は、汗と血と涙を流しても無残にちった華たちの行くあてもない、ガラクタとなってしまった倉庫。

弾いてしまった。
ピアノで。愛する音楽で、奏でてしまったことを少し悔やんだ。

ごめんなさい、ごめんね、許してよ。

ツッと暖かい何かが頬を伝う。

『あれ、なんで、泣いてるんだろう？』

ただ、その慰霊碑から、沢山の愛を求めたアイドルの嘆きが聞こえた気がした。