隣の部屋のさとみくん。【すとぷり】

19日目。 ページ23

すっかり夜が老け、新聞配達の音がぼんやり遠くで聞こえる。


静まり返った部屋に僅かに朝日が差し込む。


時刻はとっくに丑三つ時を過ぎ朝日が昇りかけていた。


…熱中してしまった。


数時間握りしめていたゲーム機には、力が入りすぎていたのかほんのり手汗が滲んでいた。


ゲームを始めると周りが見えなくなってしまう癖があった。


ソファーから立ち上がり光を放つ携帯に目を落とすと、緑色のSNSアプリに通知が2件。1つは公式アカウント、もう1つは…


はると。朝早くにごめんね。
明日なんだけど、クレープ屋さんで待ち合わせない?僕やっぱりAちゃんとクレープ食べたくて



春斗くんから数時間前にメッセージが来ていた。日付が変わる前、丁度さとみくんと居た時くらいだ。


返信が遅いとかいうレベルじゃない。
携帯の前で心配する春斗くんの姿を想像して、背筋を凍らせた。


慌てた私は、かつて無いくらいは素早く指を動かす。


A返信遅くてごめんね、全然いいよ〜!




何故携帯どころかSNSすら見ずにゲームに打ち込んでしまったのだろうか。


春斗くんをきっと沢山不安にさせてしまった。自責の念に押し潰されそうだ。


まさに、後悔時既に遅し。


あまり会話がされていないトーク画面に目を落とすと、私のメッセージの横に、"既読"の二文字が表示される。


はると。わ、Aちゃん朝早いんだね。
じゃあ14時にクレープ屋さんの前でいいかな?



A了解!スマブラ絶対勝つからね〜


はると。絶対負けない!!



朝早いんじゃなくて徹夜しました。とは、言えず。春斗くんからの返信が爆速だったのが気になる。
まさか、私の返信待ってたり…？？そこまで考えて、本能的に思考を停止させた。流石に自意識過剰にも程がある。



顔を見なくても彼が気合を入れてる姿が思い浮かんで、思わず笑みを零した。




Aじゃあまた後でね!



はると。はると。がスタンプを送信しました



送られてきたスタンプは、ピカチュウが手を振っている可愛らしいスタンプ。流石、ピカチュウ好きなだけある。


爽やかで幼げな声と釣り合う、可愛らしい趣味を持つ彼は意図も容易く沢山の女性の心を射止める。



こうして接してても、たまにきゅんと胸が高鳴るのだ。当然、沢山の女性が彼に堕ちるのだがこれも計算の内だったら怖いな、なんて思ってみたり。

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