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一話 ページ7

――ふと目を開けると、
視界には部屋の天井と思わしき光景が映った。

「ここは……」

ゆっくりと起き上がり、辺りを見回してみる。
ふと、妹の姿が見当たらないことに気がついた。

「あの後気を失って……」

気を失っている間に殺されて
死んでしまったかと思ったが、
自身の体温で温められたであろう布団の
ぬくもりを実感し、ほっと一息ついた。

幸い、殺されはしなかったようだ。

しかし妹の姿がないことが気がかりで、
居てもたってもいられず立ち上がる。

少しだけ様子を伺おうと、襖を開けようとすると、
手にかけた襖が勝手に開いた。

「わっ……!」

真っ正面から何かとぶつかり、軽く目を閉じた。

再び目を開けると、目の前には一人の少年……
いや、少年の格好をした少女が申し訳なさそうに頭を下げる。

「す、すみません。
あの……少し様子を見に来ただけですので」

私より身長も小さく、
けれど可愛らしい顔立ちをしている
その少女は、こちらの様子を伺うように問うてくる。

「あ、あの、お体の調子は如何ですか?
どこか具合の悪いところなどはありませんか?」

少女の気遣いに素っ気なく首を横に振ると、
彼女は小さく頷き、私の目を覗き込むように
少しだけ屈んだ。

「そうですか。あの……
昨夜のこと、覚えてらっしゃいますか?」

彼女の言葉で、
改めて昨夜の出来事について考えてみる。



――昨夜、一階の広間で両親と挨拶を交わし
寝室に行こうとした時のこと。

突如、見知らぬ白髪の男たちが家に飛び込んできて。

彼らは何の躊躇いも無く両親を刺し、
母の言葉を受け取った私は丁度二階から降りてきた
妹と家を飛び出した。

襲い掛かってくる白髪の男たちから
私たちを助けてくれた男と、後からやってきた男。

浅葱色の羽織を身にまとった彼らは、
その場では命を救ってくれたものの、
私達に逃げるという選択肢だけは与えてくれなかった。

気を失ってしまった妹を見て、
何事もないことに安堵して、私もそこで……。



――そして気がつけば、此処に居た。

「…………」

思い返してみると、壮絶な出来事だ。

しばらく黙り込んでいると、
心配そうに見つめてくる少女と目が合った。

「大丈夫です、覚えています。
……心配してくださってありがとうございます」

私がそう言うと、
彼女は安心したように微笑むのだった。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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