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三十八話 ページ44

「と、とにかく!
二人も協力してくれねぇか?」

涙目の永倉さんの言葉に、
私たちは呆然とする。

「急いで勝手場の後始末をして、
昼飯を作り直さなくちゃならねぇ。
もう俺たちだけじゃ無理なんだ」

唐突過ぎる永倉さんの依頼と
幹部の皆の眼差しに戸惑う。

「頼む! 平隊士どもに知られて、
この騒ぎが大きくなっちまう前に
なんとか解決してえんだ!」

「勝手場も大変だけどさ、
土方さんの方だって誤魔化さなきゃ駄目だろ?
さっきのひどい物音で、何か変な事が起きてる
って向こうも勘付いたはずだし」

両手を合わせた永倉さんに負けじと
平助さんまでそんなことを言い出す。

「それも大変だろうけど、
まずはあの猫を捕まえないと
続けて被害が起きそうだよね」

平助さんに乗って要求を増やす沖田さんに、
斎藤さんが付け足す。

「それぞれに役割を分担する必要があるな」

私と千鶴さんは静かに目を合わせる。

「今は猫の手も借りたい状況だ。
あんたらも俺たちと働いてくれ」

「ま、なるようになるだろ。
そんなに心配すんなって」

斎藤さんと原田さんの念押しが込められた言葉に
折れたのか、千鶴さんが小さく挙手した。

「……じゃあ、やります」

「ありがとよぉ千鶴ちゃん!」

永倉さんは千鶴さんの手を掴み、
ぶんぶんと振り回している。

当然、次は私に視線が集められた。
ああ、千鶴さんなんて既に涙目じゃないか。

「わ、わかりました、やります!」

「すまねぇな」

なんて仰っていますが原田さん、
そんな満面の笑みでは説得力はありません。

「じゃあ、私は平助君と一緒に
土方さんの様子を伺います」

千鶴さんの意見に皆が頷いた後、
私は丁度沖田さんと目が合った。

彼は私から視線を逸らすこと無く微動だにしない。
……まさか、一緒に走れと?

「…………」

「……私、猫を捕まえます!」

沈黙に耐えられずそう言うと、
斎藤さんが小さく微笑んだ。

「ああ、よろしく頼む」

「戦力としてはあんまり期待できそうにないけどね。
吹雪ちゃん、とろそうだし。
簡単に逃げられちゃいそう」

自分からやれと視線を送ってきたくせに
なんて酷い言い草なんでしょう。

そう言おうとしたけれど、
反論することさえも疲労に繋がる気がしたため
今はぐっと我慢することにした。

「とにかく外に出るぞ。まずは猫を探さねばならん」

ということで私たち三人は、
試しに中庭に出てみることにした。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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