第六十八夜 捧ぐ。 ページ4
「いやああぁぁああぁあ!!!!」
返り血を浴びた身体は全身血腥くて、姉上と兄上二人が私を庇うように覆い被さりながら死んだ。
そこで初めて家族が、世界が壊れてゆくのを悟った。
「さっさと姉さんに会いに行け…ッ！」
再度降り下ろされたその時には、彼女は全てに誓っていた。「復讐」を。
私は不思議と、一度も使った事がないのに剣を手に取り 一人で兵士を全滅させた。途中の記憶は無い。気が付いたら鮮血の海に一人立っていて、自分がやったはずなのに恐くて震えが止まらなかった。
「………わからない、わからないよ……………」
(もう、おねえちゃんは………)
その場に踞り、ドレスの端が赤黒く染まっていく。
「違う、違う違う違う違う違う違う違う………」
(わかってる 私が殺した)
そして私はそこで意識を失った。目が覚めると 母親がこちらをじっと見つめていて 「あんたのせいで」と、またそう言われるのかと目を瞑った。
「………心配したのよ、A」
「！ごめ、なさ………」
「あの兵士達は、貴女が？」
「………」
「そう………」
優しく頬を撫でられ、触れられた箇所からひやりとした感覚が広がった。
「無茶して、駄目じゃない」
「ごめんなさい…」
母は優しい顔をしているはずなのに、何処か怖かったのを覚えてる。
「……セルアスと、セルビアは……仕方がなかったのよ…」
「違う、私のせい………私が、弱いから……」
違うわ、と母上が言った瞬間 甲高い悲鳴が廊下から聞こえて、母上が私をクローゼットに隠して飾られていた剣を手に取った。母上が剣術を使えるのか、そして母上が強いのかと私は不安になり 今にでも飛び出してしまいそうになった。
「姫はここか！！」
「…姫？誰のことかしら」
(また、私のせい………………？)
「王家を皆殺しにしろとの御命令だ！！」
「貴方達にこの国は壊せない。私達の娘が…いずれ“瞳の真理”に気付けば この国はどの国も勝てぬような、強国になるわ」
自惚れるな、とその男は母上に斬りかかった。
母上は華麗な動きで攻撃を交わしながら男の剣を折ってしまう。とても、強かった。だが肉体だけでの強さは明らかに男の方が上で、母上は首を締め上げられた。
「ぐぁ…………！」
(私のせいだ、私がいるから、私が存在するから…)
眠たそうに母上の瞼が閉じられた。二度と開かないその瞳からは、最後の一瞬だけ紫色の光が妖しく光っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
阿呆代表の神(プロフ) - ジュダルがメルレム？の兄となると、確かですが、ヤンバラの一族ということになりますよね。ジュダルはヤンバラ一族ではありませんよ。辻褄があってないというか……原作と違いすぎてゴチャゴチャになってますよ。 (2020年9月9日 17時) (
レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - 伯爵王家編は残すところ二話です。伯爵王家編の終了と共に続編へ移行します (2015年4月23日 1時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - もうすぐ伯爵王家編完結です。まさか三十話にわたり書くことになるとは思いませんでした(；・ω・) あと少しで終わる予定ですので皆様応援よろしくお願いします！ (2015年4月19日 21時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - えるふぃさん» 有難う御座います！頑張ります(｀･ω･´) (2015年4月15日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 乙姫さん» はい！！大丈夫ですよ、ちゃんとわかります！自分の書き方に自信を持ってください！続きが楽しみです♪ (2015年4月15日 17時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
