カーテンコールは拍手が鳴るまで終わらない【おそ松さん】 (ページ6)

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3:舞台には誰も居ないページ6

5つの同じ顔が、一斉に此方を向いた。私の中で混乱が起きる。それは同じ顔なのもあるが、その理由が予想している最悪の物だった場合の恐怖が強かった。
「…ほら、パニックになってるじゃん」
最後に入ってきた緑のシャツの男が、私の動揺を察した。全体から苦笑が起きる。
「あぁ、俺らは5つ子なんだ」
青が発言したその言葉が、私にとって最悪の理由だった。こういうときに勘が当たると喜ばしく無い。
私のその予想というのは、彼らが有名な5つ子のマフィアである、という物だ。桃と黄と紫と緑と青の最強マフィア。噂を耳にしたこともあるし、1度会ったこともある。しかしそのときは彼らがまだ有名では無かった時なので、私は彼らの顔を見ても誰だか分からなかった。
今、目の前に居るのが、見たことがある顔ばかりなのだ。
「やっぱ可愛いね♡君、名前は？」
『……』
これは言わない方が良いのだろう。しかし何故か囚われた状態の私は、いつか言わなければならないのだろう。
「…何か、言えない理由でもあんの」
私が口を開くと同時に、紫が呟く。そして交わるように黄が紫の前に滑り込んで来た。
「アッ、僕らが先に名前を言えばいいんダヨ！」
揺れる身体と共に、黄からカラカラと何かが鳴る。何故か右眼にだけ巻かれている包帯の奥に、答えがあるのだろう。今は気にしないでおこう。
「じゃあ僕からね☆僕は百(とど)だよ♡でも君は可愛いから、トッティーって呼んでもいいよ～」
桃のカーディガンを羽織り、私の前を軽くふわりと舞った。瞳は大きく、頭には髪留めが付いている。女子より女子、という印象だ。
百さん…いや、トッティーの方がいいのだろうか？
『…今は、百さんで…』
ちょっとレベルが高い。
「じゃあ次は僕ネ！僕は栄(よん)ダヨ！あとネあとネ、僕はやきうが大好きなんダ！」
瞳を黄に輝かせた彼は、またカラカラと音を鳴らして笑っている。機械的な声帯が少し気になるが、彼を見ていると細かいことが気にならなくなる。
『栄さん、ですね』
「違うヨ！栄！」
『えぇ？…あぁ、栄…』
よく分からない。
「……え、俺？…えっと、俺は市(いち)。…まぁ、よろしく…」
紫の瞳を揺らして、彼は小さく話した。髪は整っておらず、猫背な彼は、挙動不審そうに目を泳がせている。
『…市？』
先程の栄の訂正を気にして呼んでみるが、無反応なので、市と呼ぼう。
「…僕はやらないよ」
緑が流れを感じ、割り込んだ。そして逃げるように部屋から出ていってしまった。