カーテンコールは拍手が鳴るまで終わらない【おそ松さん】 (ページ4)

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1:緞帳が上がるページ4

Aside

鈍い音と共に、血飛沫(ちしぶき)が舞った。指から伝う振動は、心臓の高鳴りを速めた。思わず溜息を漏らす。
身体はようやく安堵を感じ、銃口を下に向けた。肩に入った力も、同時に抜けていく。
そのとき、耳元に雑音が入った。そっと右耳に手を添えると、僅かに声が聴こえる。やがてその声は明確に聴こえてきた。
《…聞こえるか、A》
『はい。ミッションは成功、データを送ります』
ボスの声は、少し落ち着く。血を浴びて興奮気味の私は、小さな深呼吸をした。そして床に置いていた鞄を開き、パソコンに指を当てた。
『…送りました』
《良くやった。直ぐに帰れ》
『はい、ボス』
またも流れた雑音と共に、通信が途絶えた。また孤独を感じる時間だ。外に置いた車に向かう為、階段がある方向に身体を翻した。
コツンッと響く私の靴のヒール。しかし違和感を感じた。何故かエコーがかかったように二重に響いた靴の音は、落ち着いたはずの私の心臓を大きく鳴らし始めた。

誰か、居る。

目の前にある曲がり角…或いは後ろの扉？何処に居る…何人居る…？
そっと右腰に付けたナイフを握り、ゆっくりと曲がり角に近づく。自らの靴の音に心臓をキリキリと苦しめさせながら、頬を伝っていた冷や汗を落とす。そして曲がり角の向こう側に脚を踏み入れようとした…その瞬間。
『っ!?』
一瞬のうちに握っていたナイフを振り落とされ、私の額に冷たい何かが当たった。
銃口だ。
目の前の男は真顔で見つめる。私には目の前の彼の瞳に映る、自らの絶望した顔しか見えない。思わず靴を引きずらせながら、後ろに身体を反らせた。
「動くな」
その男は引金に指をかけた。冷や汗が床を落ちた。私は直ぐに身体を戻す。すると目の前の男は小さく呟き、チラと上を見た。
口を動かしたと思うと、気配を出さぬまま、右側から1人男が出てきた。気づかなかった。ナイフをそっと取ってから、その男は私を少しだけ見た。
と、後ろから猛烈な殺気。しかし動けない。
「アハッ」
まるで機械のような声が聞こえたと思うと、頭に痛みが走った。何か硬いもので殴られたようで、視界に靄がかかる。身体は崩れ、後ろに落ちていく。
そのとき、背中に人の気配。私の身体を優しく支えた。少しだけ見えた顔は不機嫌そうだったけれど。