カーテンコールは拍手が鳴るまで終わらない【おそ松さん】 (ページ16)

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9:人形は舞台を舞い、観客を魅せるページ16

Asaid

全員は改めて、栄の話に耳を傾けた。
「エット、こんにちは！僕は栄ダヨ！」
手をパタパタと振る。何とも可愛らしい。
「でも、それはオシゴトのときの特別な名前！僕の本当の名前は、十四松！」
『…十姉妹？』
私は頭の中に、綺麗な小鳥の囀(さえず)る様子が浮かんできた。成程、名前までも可愛らしい。
しかし彼は、私に台詞の書かれた紙を見せてきた。そして、
「それは鳥さん！僕は十四松ナンダヨ！」
と愉快そうに笑った。何だか、彼はいつでも楽しそうだ。
けれど、何を言っているのかよく分からなかった私は、指を差された文を見てみる。
「僕の本当の名前は、十四松。」
先程、彼が言っていた台詞だ。嗚呼、数字の十四なんだ。
十四松、十四松、十四松…うん、覚えた。
納得しながら、私は彼に紙を返した。
「ソレから…僕は人形デス！何故動けるかって言うと、ソレが僕の"能力"ダカラ！」
『！』
私は思わず、能力というワードに身体を跳ねさせてしまった。何故なら、その言葉がこのファミリーをここまで有名にした鍵なのだ。
既に私は彼らの情報を持っている。
桃と青…つまり、百さんと架羅さんは能力者では無い人間。緑…樗露さんは情報取得能力。紫…市は人形等を操る能力。
そして、黄…十四松は、不死身だ。
しかし…もしかしたらその情報が間違っているのかもしれない。きっとこのファミリーは、世間に嘘を付き続けているのだろう。
「僕の能力は、同じみ最強の"不死身"！
…と、世間からは思われている」
いきなり、幸せ全開といった十四松の笑顔は、ニタリと騙すことに快感を覚えているような、そんな顔へ変わった。
「僕の能力は"生命作成"。どんな物にでも命を与える事が出来る能力。僕は、自らに自分の能力を使って命を作ったんダ」
『え…』
彼がそう言いながら掌(てのひら)を開くと、白いハートが生まれ、宙を浮く。そのハートを十四松は、近くに置かれたぬいぐるみに投げつけた。
その途端、ぬいぐるみは自ら動き始め、踊った。そして、立ち尽くす私の脚を掴んできた。
『きゃっ！』
「アッ、安心して！この子は、Aと踊りたいだけダヨ！」
十四松の助言に、私は1度ぬいぐるみを見た。可愛らしい猫のぬいぐるみが、私の脚を掴み、寂しそうに見つめている。
『いいよ、踊りましょう』
何だか微笑ましくもなり、放っておくのも可哀想なので、少しだけ付き合うことにした。
会議中、動くぬいぐるみと少女が舞う。こんな奇妙な景色、他に無いだろう。