7.5！:会場の外に1人、少女が佇んでいることを誰も気づきもしない ページ13
十四松said
「…気になることは沢山あるだろうけど、全て広間で話そう。此処は寒いだろう？」
カラ松兄さんがフォローに回るように微笑した。Aはやっと落ち着いたのか、小さく頷いて歩き出した。
…やっぱり怖かったのかな？嫌われちゃった。
「…十四松」
僕の横に一松兄さんが寄り添い、小声で呟いた。僕は顔を上げる。
「気にしなくていいよ、お前には俺が居るから」
真顔で、でも優しい声だった。兄さんは不器用だけれど、とってもいい人。そんな風なことを考えていると、何を思っていたのか気にならなくなる。
「ウン、ありがとう！ア、そうだ！あの子の所に行ってくるから、皆に言っといてクレル？」
そろそろ挨拶しなきゃ！
兄さんは少し考え、それから頷いた。
右折していく皆とは逆に僕は左折しながら、一松兄さんの顔を見る。その顔は、随分不安気だった。
「来たヨー！」
鉄の扉を勢い良く開け、叫んだ。扉はしなるほどのスピードで向こう側へ行き、取手の部分は壁に穴を開けた。
「エヘヘッ、遅くなってゴメンネ？」
僕はベッドで眠っている彼女の身体を起こした。そして、身体の下に腕を入れて、持ち上げる。彼女の身体は重力に流され、衣服や髪は下に伸びた。
「お姫様抱っこー！やっぱり軽いネ！」
彼女の香りを感じながら、僕はそっと頬にキスをした。冷たい彼女は、可憐な顔でまだ眠っている。綺麗な瞳を見たい気もするが、彼女はこれでいい。
「ヨーシッ！走るヨ！転けないように頑張るネ！」
彼女の寝室から飛び出し、いつもよりはスピードを落として、広間へ向かう。風は彼女の前髪を掬い、舞わせる。
首元には、僕とお揃いの白いハート。僕の能力を使うと付くマークだ。けれど彼女には胸元に黒いハートがある。心臓にのみ、僕の能力が効かない。昔、僕が護りきれなかった罪。
なんて無力なんだろう。
心で呟きながら、走る脚を止め、彼女の唇に優しく唇を重ねた。
8:突如舞台に飛び出したのは、朽ちかけた人形だ→←7:観客は微動だにせず、舞台を直視していた
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作者名：しおんの蜂蜜 x他1人 | 作成日時：2018年1月18日 14時
