7:観客は微動だにせず、舞台を直視していた ページ12
Asaid
『……』
人形…!?
瞬きも忘れ、私はその黒くカラカラと揺れた瞳や膝の球体関節を交互に見つめた。
すると栄は私の前でクルリと回り、笑う。
「ゴメンネ、隠してて！びっくりしちゃった？怖いカナ？」
怖いというか、現実味を感じずに唖然としかなれないのだ。
彼は私の顔を覗き込んで来た。と、醜い右眼が此方に向く。笑った口角がいつもは明るく優しそうなのに、今は悪魔のように恐ろしい。
私は咄嗟に身体を反らして、距離を軽く取ってしまった。彼は分かりやすく眉を下げ、自ら身を引いてしまった。
「…気になることは沢山あるだろうけど、全て広間で話そう。此処は寒いだろう？」
架羅さんが優しげに笑う。私は自分を落ち着かせるように、深呼吸をして頷いた。
「でも、ここまで知られたらヤバいよね〜…排除か或いは…」
百さんがブツブツと呟きながら、架羅さんの横へサッと入った。後ろでは栄の横に市が居る。
…となると…。
「…ここからの話、多分よく分からなくなるよ」
樗露さんが私の横で、此方を見ないまま言った。私も彼の顔を少しだけ見て、それから右下に向けた。
『成る可く…頑張ります』
何とも適当な生返事だと自分でも思うが、どう答えれば良いのか分からないのでしょうが無い。
走ってきたときより、長い廊下に感じた。
「あれ？そう言えば十四松は何処だ？」
架羅さんがいきなり後ろを向いて聴いた。
十四松…？
と、私以外の全員がその言葉に硬直する。数秒して、百さんは横で架羅さんをスタバァの看板で殴り、市は腹パンを食らわせ、樗露さんは私の耳を塞いだ。
『ぅええ!?』
突然だったので可笑しな声を出してしまった。
周りでパクパクと口を動かしている人々に顔を向ける。市は明らかにキレている表情で、いつもの真顔とは違う印象を受けた。百さんは呆れている感じ。樗露さんは後ろなので、見えなかった。
やがて手が離れ、全体から溜息が漏れた。
「す、すまないなA。さぁ、行こうか」
吐血しながら苦笑している架羅さんは、また先頭立って歩き始めた。動揺している私に声をかけたのは百さん。
「大丈夫、いつもの事だよ♡」
余裕を感じる笑みに、先程のことは何だったのだろうと、1人心で呟いた。
「そうだな…そこのソファーに座ってくれ」
紅い豪華な座席を指差し、架羅は微笑む。それぞれは色付いた固定の場所に座っていく。
「…さて、全てを語ろうか」
対象な場所に置かれた蒼い座席に座った架羅さんが鋭く私を見つめた。
7.5！:会場の外に1人、少女が佇んでいることを誰も気づきもしない→←Six:しかし蝶々は直ぐに窓から吹く風で外へ追い出された
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作者名：しおんの蜂蜜 x他1人 | 作成日時：2018年1月18日 14時
