Six:しかし蝶々は直ぐに窓から吹く風で外へ追い出された ページ11
カラ松said
部屋の扉を強く開ける。木製の扉は曲がりそうな程のスピードで向こう側へ行き、少し此方側へも跳ね返った。
「…居ない」
やはりAは居なかった。どうやら十四松の言う通り、聴いていたようだ。だが、そこはあまり問題では無い。
1番の不安は、彼女が俺らから逃げている間に、あの
「ゴメンネ兄さん…もっと早く気づけばヨカッタ」
後ろから十四松が呟く。しかしこれは誰か1人の問題では無くなっている。それに十四松が見つけてくれて、先程は極秘情報を会議で話すことは無かったし彼女にバレなかった。
「…いや、気づいてくれただけで有難いぞ！」
俺は頭をそっと撫でる。不安気な表情は徐々に明るくなり、いつものような笑顔へと変わった。
と、ガタンッと大きな音がする。俺は恐れていたことが起きたのでは無いかと、地下牢の方へ顔を向けた。否、その場にいた全員が顔を動かしたようだ。そして音は長く響き、まるで錆びた扉でも開けているような…。
「っ、栄！市！2人は地下牢へ向かえ！百は監視！樗露はボスの補佐！」
｢｢｢｢Yes sar｣｣｣｣
俺が咄嗟に叫んだ指示通り、栄と樗露はスピード良く地下牢へ駆け出し、百は指示室へ、市は屋根裏に登って回り込みを考えたらしい。俺は万が一の為に銃を数個、手に持って駆け出した。
この部屋から地下牢はかなり遠いが、脚の速い樗露と人間外れな栄なら直ぐだろう。…まぁ、栄は
俺が辿り着いたときには、既に樗露がAの腕を掴んでいて、市は地下牢の鍵を掛け、栄は彼女の目の前に立って地下牢への道を制していた。
…いや、十四松とAの様子がおかしい。
『人形…？』
震えた声で小さく呟いたAの言葉は、俺に全てを諭すようだった。十四松を見ると、焦るように見開いた左眼と、包帯を巻いていた筈の醜い右眼が、Aの方を見ていた。
「ア…エット…」
十四松は驚きのあまり、何も言えないようだ。その場に居る誰もが凍る出来事だ。
俺はもう1つ更に恐ろしいことを考え、十四松の脚を見る。やはり包帯が、此方も取れている。膝と右眼を覆っていた包帯は、走っている合間にでも取れたのだろう。
『球体…関節…』
Aも膝に気づき、呟く。どうしようも無くなったこの状態で、彼は隠す気が無くなったようだ。
「ソウダヨ！僕は人形サ！」
7:観客は微動だにせず、舞台を直視していた→←6:と、客の視界にはライトを浴びた蝶々が映る
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作者名：しおんの蜂蜜 x他1人 | 作成日時：2018年1月18日 14時
