◇御幸のショートショート (ページ9)

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花① ページ9

体育祭を目前にした通常授業のある日、片岡先生は現代文の先生だけど、今日は古典の代役とかで源氏物語を教えにきてくれていた。

「女性の風貌を花に例える表現が散見される。平安時代は特に異性への嗜好を花になぞらえて表現する場合が多く……」

その休み時間、珍しく授業をちゃんと聞いていた倉持くんが御幸くんに話しかけていた。

「女子の好みを花にしたら、おめぇ、何？オレはひまわりかな？花自体種類あんま知んねぇけど」

「ひまわり？へぇ～♡誰かなぁ？」

御幸くんは手のひらを眉の上に当て展望するような仕草をしながら、倉持くんをからかっている。

「おめぇも言えよ！」

と、机の下で御幸くんを足で蹴ってる倉持くん。

仲がいいなぁと思いながら見ていると、御幸くんはニヤニヤと笑いながら、

「雑草」

と、答えて、またガシガシと蹴られている。

「花っつってんだろうが！」

「雑草の花だよ」

御幸くんは、くくくと、声を殺して笑っていた。

体育祭の中盤、私たちＢ組は最下位を走っていた。

なんとか巻き返したい勢が、熱い声援を送っている。

倉持くんが花形のリレーに出まくっている中、御幸くんは明らかに省エネモードな競技に出ていた。

本部テントから選手招集の放送が流れる。

『借り物競走に出場する選手は、入場ゲートに集合してください』

中盤のお楽しみ種目にも、もっか最下位の我らＢ組は熱い。

「御幸！てめぇ、本気でやれよ！適当にやりやがったらコロス！」

と、こめかみに血管を浮き上がらせながら叫ぶ倉持くんは、何を隠そう、「なんとか巻き返したい勢」の筆頭ということになる。

隣のクラスは、なんでこんな種目にムキになってんだ？とばかりに呆気に取られていたが、そこはさすがの倉持くんで、全力で本気モードだった。