◇御幸のショートショート (ページ5)

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親不知② ページ5

会話が多分噛み合ってない。

そう言えば初めて話したから、お互い探り探りなのもある。

御幸はあまりクラスの人と関わらないし、保健委員でもなければ私とも話をすることはなかっただろう。

「偉いな……。倒れもするよ」

「何が？」

「家事とかやってんだろ？」

「ん？」

「ん？」

　噛み合わないまま話を進めて良いのだろうか。

良いわけないけど、初めて話す人との会話を軌道修正する術を私は知らない。

「えーっと……」

「保護者面談とかどうしてんの？ウチの親父はいつも来られねぇから、高島先生が代わりにやってくれてる」

「ああ……そうなんだ」

　保護者面談は普通にお母さん来てくれたけど、御幸、お母さん来られないんだ。

「ウケるぜ？担任と礼ちゃんが向かい合ってる姿」

「高島先生は親って感じじゃないよね？お姉さん？かな？」

　私はさっきまであった激痛がなくなっていることに気づいた。

「あ、あと……。ゴメン。一応、熱を計んなきゃなんない決まりになってっから、脇で計らせてもらった。変なことはしてねぇからな？報告な？」

　御幸が指さした先は私の胸で、制服のボタンが二つ外れていた。恥ずかしすぎて死にそう。

　私のその様子を見て、御幸の方も恥ずかしくなってきたのか、頭をかきながら目をそらす。

「いや、マジでなんもしてねぇから。八度超えてた。バファリン？飲ませといた」

「え？どうやって？」

「砕いて水に入れて、ちょっとずつ口に入れたら飲み込んでくれたから」

　痛みがなくなったのはそのせいか。

解熱剤が痛みに効いたんだ。それにしてもこの空気感。なんなんだろう。居心地悪いというか、恥ずかしいと言うか。

「紙コップでちょっとずつ。そんな気が長ぇ方じゃねぇから、口移しの方が早ぇよ！とか思っちったよ。しねぇけど」

　私は棚を指さした。

「あ……」

　御幸は赤くなった。

「吸い飲み器あったのか」

「普通保健室にはあるねぇ。でも、ありがとう」

　御幸は悔しそうにしている。

「オレも慌てることあんだな！」

　御幸は椅子に戻りながら笑った。

「保健の先生は？」

「市役所で何か集まりあるとかで」

　私は起き上がってベッドに腰かけた。