親不知�� ページ4
親知らずが痛い。
元々歯並びも悪かったけど、矯正して綺麗に並んだ歯列をあざ笑うかのように親知らずが痛む。
授業中にどうしても耐えられなくなって挙手した。
保健室で痛み止めをもらうことはできるだろうか。
「一人で行けるか？」と先生に問われたが、高校生にもなって一人で行けないなんて言う人いるんだろうか。
「大丈夫です」と、立ち上がって、廊下に出たまではいいが、私はそのままそこに座り込んでしまった。
痛みを越えて、少し意識が遠くなる。
「おい。ホント、大丈夫なのかよ」
「センセー！なんかヤバそー」
最後、野球部男子二人組の声がして、私の視界は暗転した。
•
目覚めるといきなり目の前に人の顔があった。よく見るとそれは、同じクラスの御幸の顔で、閉じた目に沿う長いまつ毛の毛量の多さの方にこそ驚かされる。
休み時間なのだろう。廊下の方では人の往来と喧騒が聞こえ、御幸はあくびしながら身体を大きく伸びた。
「んぁ〜。起きた？」
「あ……。保健委員……」
「んー」
ベッドに寝かされていたのは私。
運んできてくれたのだろうか？ベッドサイドの椅子に座って居眠りしていたのが御幸。
「授業戻れば良かったのに」
「一度戻った。今はもう昼休み」
御幸は立ち上がって、養護教諭のデスクで何かノートを書きながら話す。
入室ノートだろう。
「親……いねぇの？」
「ん？」
「迎えに来てはもらえねぇんだろ？」
「そうだね。いないと思う」
「思う？ん？」
「ん？」
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作者名：ほさつ1秒83 | 作者ホームページ：https://twitter.com/hosatsu1_83
作成日時：2020年11月15日 2時
