第13話 バスの中 2 ページ27
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「先に約束してへんのやったら、別にうちが千鳥と回ったってええやろ。」
「駄目なもんは駄目なんだよ」
アツヤはさも当然という様子でなえをあしらう。板挟みになった千鳥はあわあわと2人を交互に見やっていた。
「み、みんなで回ればいいんじゃないかな…?」
「それはダメだ!」
「それはダメやっぺ!」
千鳥の提案はアツヤとなえ、息ぴったりに却下されてしまう。千鳥はもう縮こまることしかできなくなってしまった。
そんな3人のちょっとした緊張感は、アツヤの隣に座る士郎の一言によって消えることとなる。
「いいんじゃない?」
「あ、兄貴!?」
「姫と行って来なよ、千鳥。」
士郎はにっこり笑うと千鳥たちにそう話す。その言葉を聞いたなえはぱっと顔を明るくし、アツヤは目を見開いて士郎の方へ身を乗り出した。
「なんで…」
「だって東京にはお洒落な洋服屋さんとかもあるでしょ?きっと女の子同士で行った方が楽しいと思うんだよね」
士郎は薄く笑ってそう続ける。こうなってはアツヤには言い返す術が無かった。
「やったー!さすがキャプテンは話のわかる人やっぺな!それじゃあ千鳥、一緒に東京を見て回るやっぺ!」
「う、うん!」
なえは性懲りも無く立ち上がると、千鳥の首にぎゅっと抱き着いた。その腕に手を当て、千鳥も微笑む。
そして千鳥はアツヤの方を向くとこ優しく微笑んで「アツヤくんとは、また今度一緒に遊ぼうね」と言った。
「……兄貴、本当にいいのかよ……」
すっかりしょげてしまったアツヤは小さな声で士郎に尋ねる。士郎は澄まし顔で「当然だろ?」と答えた。
「姫は女の子じゃないか。何も心配することなんかないよ。」
「そういう問題じゃなくてだな…」
「それより、ボクたちも東京観光を楽しもう。この辺りに大きなスポーツショップがあるらしいよ。」
士郎はそう言うとガサリと地図を広げた。もう何を言っても聞かなそうな兄にアツヤは一つため息をつくと、兄の広げたマップを覗き込んだのだった。
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作者名:いわき | 作成日時:2019年10月18日 0時