第13話 バスの中 1 ページ26
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「うわ〜っ、都会だ〜っ！」
それから数日後。
白恋イレブンはバスに揺られ、東京の街を走っていた。全国大会の開会式を間近に控え、その宿舎へ向かう途中なのである。
「こんぐらいではしゃぐなんて、千鳥もお子様だなぁ。」
窓の外の景色にきらきらと目を輝かせる千鳥を隣に座るアツヤは鼻で笑う。かくいうアツヤもどこかソワソワと落ち着かない様子だが、千鳥はそれを指摘するほど野暮ではなかった。
「だって、わたしたち東京なんて来るの初めてだよ！すごい、街が鮮やか…！あっ、今、テレビで特集されてたお店があった、見えたよ！」
「ただのチェーン店だろ」
「でもうちの近くにはないよ！珍しいものばっかりだ、うわぁ…！」
弾む鈴の音のような千鳥の声に、バスの中は和んでいく。
「なーなー千鳥！」
ふと、千鳥の真後ろの席からにゅっと人影が伸びてきた。千鳥が見上げると、座席の上ににっこり笑顔のなえと目が合う。
「姫さま。ちゃんと座らないと危ないよ？」
「そんなことより、これからうちと一緒に東京観光せえへん？」
「えっ！」
東京観光、その言葉を聞いた途端千鳥の目は一層輝きだす。しかし、千鳥のとなりに座るアツヤが、千鳥が口を動かすより早く「はぁ？」となえに突っ掛かる。
「千鳥はオレたちと一緒に東京回るんだよ。」
「ん、先に約束してたやっぺか？」
「そうじゃねえけど、そうなんだよ。」
「なんそれ、意味わからん。」
アツヤの言葉になえは唇を尖らせる。そのときバスがカーブにかかり、立ち上がっていたなえは「わわっ」とバランスを崩し、座席に尻餅をついてしまった。
「ホラ、立ち上がってると危ないぜ」
それを見たアツヤはざまぁみろとでも言いたげに、ニヤニヤ笑った。なえはますます眉をひそめる。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
