【イナアレ】島柄長 (ページ28)

今日:35 hit、昨日:2 hit、合計:53,753 hit

第14話東京観光 1 ページ28

＊

「千鳥、次はここ行こ！」
「ま、待ってひめさま……」

それからバスは宿舎へと到着し、荷物を預けた白恋メンバーは各々東京観光へと飛び出していった。
千鳥となえも同様、タワーやカフェなど、さまざまな観光施設を回っている。そして今、2人はとある大きなショッピングモール内で買い物を楽しんでいた。なえの両腕にはたくさんの買い物袋が下がっている。
一方、はしゃぐなえを横目に、千鳥は手を膝について息を整えていた。あちらこちらの店へ連れ回され、千鳥の体力は限界だった。

「姫さま、少し休みたいな…」
「あ！じゃあここのフードコートで休憩しよ！」

千鳥が苦笑いで提案すると、なえは壁にかかったショップリストを指差して言った。千鳥は頷き、2人でそのフードコートを目指すことにした。

フードコートに到着した2人は適当な店で飲み物と軽食を買うと、席に着いた。千鳥は買ったミルクティーを口に含むと、ふうと小さく溜息をつく。

「ごめんね、姫さま。もっと色んなところ回りたかっただろうに、わたしに合わせてもらっちゃって。」
「ううん、気にしないで欲しいやっぺ。うちもちょっとはしゃぎすぎたわ。」

なえも同じくフードコートで購入したドーナツを片手にあははと笑う。

「それにしても、姫さまいっぱい買ったねえ。」
「いやー、いつも服はお父ちゃんが用意しちゃうからなぁ、たまに自分で買うとどうしても目移りしちゃうんや。」

なえの言葉に千鳥はなるほど、と納得した。なえはしろうさぎ本舗という大会社のご令嬢だ。家ではお嬢様のような生活をさせられているのかもしれない。

「でも、それ言うたら千鳥は全然買ってないよなぁ。せっかく千鳥に似合う服たくさんあったんだから、ひとつくらい買うても良かったんとちゃう？」

そう言うなえに千鳥はあははと笑いながら冷や汗を流す。つい先程行われた服屋での1人ファッションショーを思い出したからだ。なえが『きっと千鳥に似合うっぺ！』とたくさんの服を試着室に投げ込むものだから、千鳥は少々困ってしまったものだ。ただ、それを着るたびになえが満面の笑顔で『やっぱり似合う！とっても可愛いっぺ！』と褒めてくれたので、千鳥は満更でもなかったのだが。

＊