【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス IV (ページ18)

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163話ページ18

「ボールが怖くなったか」

「!」

ベンチから離れてフィールド外にある黄色の柵にもたれかかり、風に流され動く雲を見上げていた吹雪。水城の手も引いて行こうと思ったが、水城はまだ足が万全ではなかった。なのでそこは諦めて、被っていたタオルを置いて『いってらっしゃい』と水城の言葉を背中に受けながらこちらに来た。

そんなとき、自分の方にボールが転がってくる。柵に当たるところをただ見ていた吹雪だったが、取りにきた豪炎寺にそう言われて緩慢な動きでそちらに目を移した。

「怖くて当然だ」

「ぇ…」

「俺も怖い。怖さを抱えて蹴る、それだけだ」

「怖さを抱えて蹴る…」

差し出されたボールを受け取ると豪炎寺は頷いた。そこに円堂が立向居の相手をしてやってくれと声をかける。返事をしてそちらに向かう豪炎寺。それを見ていた吹雪だったが「吹雪、お前もだ!なっ!」と円堂に笑いかけられ、小さく笑って頷くとそちらに向かった。

「吹雪、頑張れよ…」

円堂の小さな呟きは聞こえなかった。

「ファイアトルネードッ!!」

ゴール前に立つ立向居に打ち込まれたそのシュート。立向居が青いゴットハンドで迎え打つが、高火力のそれには勝てず砕けてゴールが決まった。見ていた外野が感嘆の声を上げる。

「吹雪っ」

豪炎寺を讃えながら立向居は鬼道にボールを投げた。そして鬼道は一瞬考えてから吹雪にパスを出す。吹雪はどうするのか、水城はベンチからじっと見つめていた。

『っ吹雪君…!』

ボールをただ見つめて、トラップもできなかった吹雪。水城がベンチから駆け寄ろうとするが、立ち上がれたものの走り出すための力が上手く入らず崩れ落ちた。秋が慌てて手を貸す。

「…解放してやりませんか、サッカーから…」

「古株さん…」

「このまま吹雪を置いていても、本人もチームも辛いでしょう。北海道に返してやるのが、一番じゃないでしょうか…」

駆け寄ろうとしてやめた瞳子に古株が静かに言う。しかし北海道に返したところで白恋にもサッカー部はある。途中で離脱した罪悪感に、上手くサッカーができないという焦燥感。士郎もアツヤも望まれていないことをずるずると引き摺ってしまったらどうしよう。そして自分の知らないところで壊れるどころか、もし命さえも落としてしまったら。そういったことを瞳子は懸念していた。

「…僕、このチームのお荷物になっちゃったね」

ここで起こってしまった問題を解決しないまま、手放してはいけないだろう。