【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス IV (ページ19)

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164話ページ19

「そんなことはない!」

「…!」

「雷門には、お前が必要なんだ!」

必要。その言葉に吹雪は少し救われた気がした。「よーし皆、もうひと踏ん張りだ!ボールはいつも、俺たちの前にある!」円堂は拳を突き上げながら周りにそう言った。

「…ここにいてもらいます。確かに吹雪は辛いでしょう。でもここには、彼が乗り越えていくために必要なものがあります」

「必要なもの…」

吹雪を囲む雷門イレブンを見て「仲間ですか、」と納得した古株。チームにまで口を挟んで申し訳ない、と謝罪する。「構いません。最終的に決めるのは、私自身ですから」そう返した瞳子は、やはりどこか切羽詰まっているように見えた。

『吹雪君、ちょっと散歩しにいこう』

「散歩…?」

『あっ瞳子監督、いいですか?』

「先に許可を取ってから誘いなさい…。…帰ってきたら走れるようになっていてちょうだいね」

『ありがとうございます!』

それから練習再開。ずっと座っていては駄目だ、と水城は隣に戻ってきた吹雪を散歩に誘う。フィールドの周りを歩くだけでは物足りないうえに、もしボールが飛んできたときに蹴り返せず少し危ない。提案した水城はその後に瞳子に頼む。瞳子は苦笑いしながら許可を出して2人を見送った。

「一青さんと吹雪さん、最近よく一緒にいますねえ」

「…それでもなんだろう、付き合ってるとか、そんな恋愛方面には見えないのよね」

「どっちかと言うと、親子…?姉弟…?私には、そんな感じに見えます」

ゆっくりながらも水城は吹雪の手を引きグラウンドから出ていく。それを見た春奈はぽつりとこぼし、その言葉を拾った秋が返した。吹雪に寄り添う水城は彼に恋慕する少女ではなく、どちらかと言うと、転んで泣いている子どもに手を差し伸べる母のようであった。

「…一青ちゃん、どこに行くの?」

『特に決まってないなあ。瞳子監督に走れるようになってこいって言われたから、それまで一緒にいてね』

「うん、一緒にいるよ」

大海原中から出て砂浜を2人で歩く。最初は水城が手を引いていたがやはりまだ歩行速度が遅く、早い段階で吹雪は隣に並んでいた。そして速度を落として水城に合わせて歩く。

『ボールが怖い?』

「…うん、怖いよ」

『そっか。当たったら、痛いもんね』

水城は尋ね、返ってきた吹雪の答えに同調した。手を繋いだまま足元に注意して岩場を登る。フナムシが岩の隙間に散っていった。