1st. ー出会いー ページ4
黒秤塔の廊下に、靴音が響く。
パタパタ、なんて可愛らしいものではなく、ドタバタと騒々しい音で。
バンッ！と派手に図書館の引き戸を開けたのは、騒音の元凶である王立図書館司書長コニー、すなわち私。
「ソニア、『例のもの』入荷したって本当!?」
「はいはい、ちゃんとここにあるわよ。」
私の様を見て、苦笑しながら私に一冊の本を手渡したのは、王立図書館館長にして同僚のソニア。
彼女には、なかなか手に入らない『例のもの』を入手してもらえるよう頼んでおいたのだ。
「ほ、本物だ...！」
「ふふ、当たり前じゃない。」
歓喜で思わず肩を震わす私の手の中にあるのは、『世界のカボチャ全集』。
世界中のカボチャを図鑑形式で解説し、さらにはレシピまで掲載した本で、私は喉から手が出るほど 欲しかったのだ。
「ソニア！ よくぞやってくれたわ...！
えーと、チリメン・キクザに、クリカボチャに... 嘘、ソウメンカボチャまで載ってる...!?」
「え、えーっと、私もカボチャプリンとか好きだなー...」
カボチャパラダイスに浸る私を見るソニアの目が、少し引き気味だったのは気のせいだろうか。
カボチャという野菜の素晴らしさについて語って聞かせていた時、不意に、図書館の外から気配を感じた。
「...ソニア、何でもいいから分厚い本！」
「え、ええ...!? 分厚い本 分厚い本...」
素早くソニアが出してくれた辞典を力一杯引き戸に向かって投げつける。
「極大魔法、
絶妙な回転を帯びて引き戸目掛けて飛んでいった私の極大魔法(仮)は、館内の新たな影には当たらなかった。
信じられない瞬発力で、辞典を避けたから。
「何するのよ、危ないじゃない...！」
辞典を片手に、怒り心頭に発してこちらにツカツカと歩いてくる人影。
「わ、悪気はなかったのよ サラ！
ちょっとジャーファルさんと間違えちゃっただけで...」
あんな奴と間違えられても...と現在進行形で御冠なのは、この国の政務官サラ。
結構 綺麗な見た目してるけど、一応 元殺し屋だから刺激しないでおく。
「...で、昨年度の輸出額の資料借りに来たんだけど。」
サラの需要に応えていると、けたたましいほどの勢いで一人の少女が入ってきた。
「ソニアちゃああああん！！ 」
...あら、可愛らしい子。
私たちはまだ知らなかった。
偶然 図書館に集まったこの4人の出会いが、人生において何より大切な出会いとなることを。
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