伊達政宗 ページ23
北寄りの奥州はこの時期でも冷える。
蔵前で木刀を振る男が一人。
政宗である。
着物の片方の襟を下ろし、腕をさらけ出している。
鍛え上げられたその腕には汗で濡れた包帯。
先の小田原の戦で負傷を負った傷は、今なお、癒えていない。
政宗「Aが、豊臣の野郎と通じていたってか」
小十郎「家臣はそう話していました。自ら白状し、抜け出したと...」
ぶんっと一振り木刀を振って、政宗は立ち止まった。
政宗「Ha!そんな器用事をAができるなんて思ってなかったぜ」
小十郎「この様な事に気が付かず申し訳ございません。もう少し早く気が付いていれば政宗様に傷を負わせる事などありませんでした...。この小十郎、どんな咎めも受ける所存...」
政宗「よせ。今更何言ったって変わんねぇよ」
小十郎「しかし政宗様...」
政宗はその場から見える田畑を見下ろした。
風に揺れて稲が揺らぐ。それはまるで水面の波動のようだ。
政宗「お前も知ってのとおり、Aは俺が連れてきた奴だ。あん時は、どこほっつき歩いてたんだって怒られた挙句、こいつを仲間にするとか言ってお前を困らせてたな」
小十郎「...滅相もございません」
政宗「来た時からあいつは俺から離れなかっただろ？最初はな、兄妹みたいだなって思ってちょっと面白かったんだよ。...丁度アイツを殺したばっかだったしな」
昔、政宗は実の弟を殺した。
家督の座を守るために...。
弟の死があっての今があると言っても過言ではない。
Aと出会ったのは丁度その時だった。
政宗「例え計算だとしても...あいつといる時は楽しかった。そうだろ、小十郎」
小十郎「...左様でございましたな。毎日のごとく政宗様と悪戯を仕掛けては皆を困らせていましたな」
政宗「いや、他にあんだろ...」
小十郎「Aは何故かこの小十郎と張り合っておりました」
政宗「そういうあいつの無謀なとこ、嫌いじゃなかったぜ」
小十郎「また、政宗様の事を何よりも想うておったかと存じます」
小十郎は真っ直ぐに政宗の背を見て言った。
小十郎「そして、貴方様もそうであったのではないかと...」
政宗「...」
黙っている政宗だが、木刀が握られた手には力が入っている。
政宗「...やっぱ、咎めを受けてもらうぜ？」
政宗は後ろを向き、木刀を横向きに突き出した。
政宗「Aを連れ戻せ。何年かかろうともな」
差し出された木刀を小十郎は両手で受け取った。
小十郎「御意」
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三楓(プロフ) - 桜華乱さん» コメありがとうございます！なるべく毎日更新できるよう頑張ります(*´∀｀*) (2016年10月31日 20時) (
レス) id: 926113a11c (このIDを非表示/違反報告)
桜華乱(プロフ) - 三楓さん» スッゴイ面白いです！更新頑張って下さい！さて、この後どうなる事やら・・・w← (2016年10月31日 20時) (レス) id: 15b036f407 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - あいなさん» コメありがとうございます！更新頑張ります(*´∀｀*) (2016年10月31日 20時) (レス) id: 926113a11c (このIDを非表示/違反報告)
あいな - めちゃくちゃおもしろいです！！頑張ってください！ (2016年10月31日 18時) (レス) id: dff3a233b0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 美地さん» コメありがとうございます(*´∀｀*)更新頑張ります！ (2016年10月26日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2016年9月8日 16時
