親愛なる狂気たちへ【石田三成大谷吉継島左近】～番外編～ (ページ4)

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『葛篭の中身（後編）』ページ4

状況が分かっていない左近に、刑部がポツリと呟いた。

「新しく使用人として来た男は葛篭の中身に何か心当たりがあったのではないか？」

「なんで！？なんでッスか！？怖っ！」

「少し静かにしやれ左近」

これ以上知りたくないという恐怖と真相を知りたいという好奇心が左近の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。

「新しい使用人の男、以前にもその屋敷を訪れていたのか？」

三成の言葉に左近がごくりと息を呑む。
それと同時に、蝋の影が大きく揺らいだ。

「真相はこうです。

新しく使用人として来た男は実は以前お屋敷の警護をしていた者でした。
ですが何らかの事情で同僚を殺害してしまい、これが見つかってしまったらまずいという恐怖からか葛籠の中へ同僚を隠し、屋敷を出ていってしまいました。
やがて月日が流れ、死体を回収するために使用人のふりをして戻って来ましたが、死体は既に別の者によって埋葬されてたことに気が付き、代わりに誰かが片付けてくれたんだな。あぁよかった。というお話です」

「よくねぇよ！？見つけた人とばっちりじゃねぇか！怖っ！」

「いいえ。とばっちりではございません。左近様、葛籠の中には何が入っていたか覚えていますか？」

「確か、女物の……。え？なんで？殺されたのは男じゃ……」

「壁に血がついた部屋なんて誰にも近寄りたがりませんよね？もしかしたらその中身を見てしまった人も人が寄り付かない場所に何か(・・)を隠したかったのかも知れません」

「止めろよォォ！もう無理、それ以上言ったら俺泣くから！」

耳を塞いで震える左近。
Aはそんな彼を見て、序盤からこの調子で大丈夫だろうかと心配になる。

「ってか、血が苦手なくせに思いっきり血が出てくるやつを選んだな」

「実際に見ていないので」

親指を立ててこれはセーフだと宣言する。

「次は私か……とは言っても刑部に聞いた話しか持ち合わせていない。それでも構わないか？」

「ええ。もちろんです」

「はぁぁ……刑部さん持込みとか嫌な予感しかしないんッスけど」

隣で喉を鳴らして笑う刑部を左近はじーっと横目で見る。

真夏の怪談話、次は三成へと続く。