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“私は誰のものにもならない”
不敵な笑みを浮かべて、掴む手をすり抜けていく白く美しい指先。
“私と居れば、貴方は楽でしょう?”
心から焦がれた、ただ一人。
その人は、どんな姿になろうとも、どんな肩書を得ようとも、私を必要とはしてくれない。
“未来が見えた。私ではない誰かと・・・”
突き放すのに、微笑む口元とは裏腹に、眉を寄せて困った顔をする。
“貴方は少し、苦労というものを覚えた方が良いわね”
言い淀んだのではない。
言うべきではないと悟ったのだ。
“でも、そうね。次、私が目覚めた時、どうしても苦しくなったら”
両手を包み込む冷たくなった指先。
もう、深い眠りが直ぐそこまで迫っているのだ。
私はその手に縋り付く様に、己の手を重ねた。
すると、それすら困った様に目を細めて微笑むと彼女は言った。
“その時は、歌ってあげる。貴方の一番好きな歌を”
そう残して、彼女は崩れ落ちる様に深い眠りへと落ちて行った。
腕の中の彼女は物言わぬ眠り姫へと変わり、彼女の目覚めをひたすら待つ己は、なんと滑稽だろう。
「待っているよ、いつまでも。私のカナリア」執筆状態：完結
“私は誰のものにもならない”不敵な笑みを浮かべて、掴む手をすり抜けていく白く美しい指先。
“私と居れば、貴方は楽でしょう?”
心から焦がれた、ただ一人。
その人は、どんな姿になろうとも、どんな肩書を得ようとも、私を必要とはしてくれない。
“未来が見えた。私ではない誰かと・・・”
突き放すのに、微笑む口元とは裏腹に、眉を寄せて困った顔をする。
“貴方は少し、苦労というものを覚えた方が良いわね”
言い淀んだのではない。
言うべきではないと悟ったのだ。
“でも、そうね。次、私が目覚めた時、どうしても苦しくなったら”
両手を包み込む冷たくなった指先。
もう、深い眠りが直ぐそこまで迫っているのだ。
私はその手に縋り付く様に、己の手を重ねた。
すると、それすら困った様に目を細めて微笑むと彼女は言った。
“その時は、歌ってあげる。貴方の一番好きな歌を”
そう残して、彼女は崩れ落ちる様に深い眠りへと落ちて行った。
腕の中の彼女は物言わぬ眠り姫へと変わり、彼女の目覚めをひたすら待つ己は、なんと滑稽だろう。
「待っているよ、いつまでも。私のカナリア」執筆状態：完結
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作者名：朔夜 | 作成日時：2020年1月9日 10時
