【東京喰種】理解者 β

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「幸せって、こういう気持ちを表すためにあるんだね」



顔を上げ、普段より更に落ち着きのある、柔らかな声で言った。瞬間、強い風が背後から拭き、一瞬髪でAの姿が見えなくなった。



「………A……？」








隣を見ると、先程まで膝を抱えていたAが消えていた。

まるで風に攫われたかのように、音もなく。







.









それから日が昇るまであたりを探してみたが、Aの姿はなかった。あいつが行きそうな所など全く検討もつかない上に、今の状態での行動範囲も把握できない。


焦りと悔しさが募っていく。



(どこで何する気だよ…)





暗い中最後に見たのは確かに笑顔だったのだ。嘲笑うでもなく、楽しんでいる風でもなく、からかいの気配もない、何か普段とは違った──…。




.







朝の6時を過ぎた頃、街がざわつき始めた。ビルの側面にふと目をやると、


「喰種が局に侵入」



その上に速報とだけ記されており、ニュースキャスターがマイクを片手に早口に状況を伝えている。




まさか。

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