第三百十九夜 その名はハルン ページ44
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「……私が何をしようと私の勝手でしょう」
私は椅子を引き、立ち上がる。
空になったコーヒーカップ持ち、カーフィア様を見下ろすように見る。
「…何処に行くの?」
「貴方には関係ありません。それより、貴方にも仕事があるでしょう。
……外交長官さん」
「仮にも代理だよ。まあ確かに、ユユの言うとおりだね!」
そう言うと、カーフィア様は机に手をつけ、立ち上がった。
「外交長官代理、仕事に行って参りまーす!」
異常なテンションでカーフィア様は食堂を飛び出した。
慌ただしい靴の音が響き、非常に煩い。
「……さて、私も最後の仕事をしますか」
***
足を運んだ先は白羊塔。
私の手には、沢山の書類が抱え込まれていた。
そして、"執務室"と書かれた扉を問答無用で開ける。
扉の先には何やら話し込む二人の男性がいた。
一人は、私が無断で入ってきたことに少々イラついておられるジャーファル様。
そしてもう一人は、こちらを向き、目を見開く一人の青年。
「ユユ!ノックはしなさいとあれほど……」
「まあまあジャーファルさん。落ち着いて下さいよ」
怒るジャーファル様を諭す青年。
そんな青年に、私は声をかけた。
確か、彼は……━━━━
「ハルン様、でしたよね」
「はい!ハルン・ラシードです!」
元気よく返事をする彼はハルン様。
有能な文官で、女性の文官内ではジャーファル様より及ばないが、イケメンだと騒がれているとかなんとか……
……まあ、そんなことどうでもいいんですが。
「ジャーファル様、書類完成しました」
「……分かりました。机の上に置いといて下さい。あ、それとユユ……」
「それだけなので。では、失礼しました」
「ちょっ、あと少し話が…━━━」
ジャーファル様が言い終わる前に私は扉を閉めた。
「………」
あれから、ジャーファル様との関係は変わりない。
"約束"も、しっかりと承諾していただいた。
過去の事を引きずったって何も成し得ない。
………まあ、私がそう偉そうに言える立場じゃないですけどね。
……でも、ジャーファル様と目の前で対峙して以来、心が痛いのは何故でしょう。
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ロータス蓮(プロフ) - 突然失礼します。作者様は私を悶えさせながら泣かせる天才か何かですか…?好きです (2021年6月30日 14時) (レス) id: f03dadf55f (このIDを非表示/違反報告)
花舞花音(プロフ) - 厨二乙さん» いえ!こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございます! (2016年3月13日 8時) (レス) id: da6eceae08 (このIDを非表示/違反報告)
厨二乙(プロフ) - 花舞花音さん» 全然大丈夫です!素敵なイラストありがとうございます! (2016年3月13日 7時) (レス) id: a105ecbf82 (このIDを非表示/違反報告)
花舞花音(プロフ) - 厨二乙さん» 構いませんよ!描くと言ってから日数があまりにも空いてしまい本当に申し訳ありませんでした!(;>人<;) (2016年3月13日 0時) (レス) id: da6eceae08 (このIDを非表示/違反報告)
厨二乙(プロフ) - 花舞花音さん» ありがとうございます!絵を載せてもよろしいでしょうか……? (2016年3月12日 18時) (レス) id: a105ecbf82 (このIDを非表示/違反報告)
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