潔癖執事とお嬢様【チョロ松】

執事が十六人 ページ18

「ふっへぇ…」
「はは、今日はご機嫌斜めですか？A様」
「うっほぁ！？……あ、お久しぶりです…」


振り返るとダンスパーティーの時の爽やかイケメン。
こんな山奥の屋敷に何の用ですか？と聞けば、貴方に会いに来たんです、と嬉しい一言。

んだこのイケメン。チョロ松も見習えよ。
スカーフを見ると、清潔感があってとても綺麗……なんだけど、少し端が汚れている。


「スカーフ……」
「え？」
「汚れていますよ？端。メイドに言いつけてお洗濯しましょうか？」


こんな高貴そうな方が、なんて思いながら手を差し出すと、お恥ずかしいことで……と顔を赤くしながらスカーフを渡された。
メイドを呼び出してスカーフを洗うよう命じる。

「あ、それと、ここのクッキーおいしいから、食べてみれば？」
「恐縮です。では、いただきますね」


ペコリと頭を下げたメイドは、クッキーを持って部屋を出て行った。


「威張らない人なんですね」
「え？」
「貴方は、威張らない人なんですね。私は今まで威張っている貴族しか見ていなかったので、珍しいです」


ほんわりと笑ったその人は、目を開けた後椅子に腰掛けた。
……まぁ、確かに威張ってはいない。別にあのメイドは私が雇ったわけじゃないし。


お父様に付いて来たメイドなんだから、あっちの方が物知りだし…。

と言うか、さっきからずっと嫌な感じが続いている。
なんでだ……？私の物に触ってほしく無い……。


私は潔癖じゃ無いはずなんだけど……。


「それでは、また後日お会いしましょう」
「はい、ではまた」


爽やかイケメンが帰った後、残ったのは彼の残り香。

ガチャッと音を立ててチョロ松が部屋に入ってくる。
入ってくるなり眉をひそめたチョロ松は、お嬢様…と言葉を続けた。


「また知らない男を部屋に入れましたね？」
「知らない事はないわ。この前ダンスパーティーで踊った貴公子様よ？」
「……なんて事してるんですか…不快です」


顔をしかめながら消臭スプレーを乱射するチョロ松。

何もそこまでしなくても……。



「お嬢様はなんで勝手に殿方を部屋に入れるんですか？襲われたらどうするんです？馬鹿なんですか？」
「馬ッ……襲われるわけないじゃない…そんな事する方じゃないわ」


ピクッと動いた手。
私を見据える瞳は、いつの間にか冷たい物になっていた。


「チョ、チョロ松…？」
「お嬢様…『男』の危なさ……教えて差し上げましょうか？」

……え。

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