カラッポ【カラ松】

Four episodes ページ6

「えっ…？」
「っ…ごめん、ちょっと血迷った」


気づけば私はトド松を押し倒し、上にまたがっていた


「っ…今どくから…」


とか言って、足が、体が動かない
何で？私は何がしたいの？


「…A…」
「へっ…？」

名前を呼ばれて 、伏せていた顔を上げる


「ん………」
「！？んっ！？」



驚きで目を見開いた私

その目が写していたのは、トド松の顔だった

「んっ、ふ、トド松！？」


できるだけ早くトド松の上からどく
何で、何で私にキスしたの？



「……………ごめんね、A。僕、あんなことされちゃ我慢できないよ…サイテーだよね、ごめんね」

何度も頭を下げるトド松をただひたすら眺める私


「…顔上げて、トド松」
「でも…！」
「私が悪いの。トド松は悪くない」


そう、私が悪いの
カラ松に好きって言って欲しいけど、言ってもらえないのなんてわかりきってるから

だから、トド松を使おうとした


同じ顔で、カラ松のことを兄弟の中で一番よく知っているトド松なら、私を受け止めてくれるかも


そんな淡い期待だけでトド松にキスしようとした私が悪い


「っ…ごめんね、トド松…私…私が好きなのはッ…！」
「うん…わかってるから、その先は言わないで…」


ソッと口を押さえられる
トド松を見ると、優しく微笑んでいた

優しい顔しないで、あの人に似てる
その目を受け入れたら私は＿＿＿

まだ私のことを好きと言ってくれていた…

あの懐かしい夏の日に戻れるかもしれない


二人で笑いあえていたあの演劇部の部室の思い出に
戻りたいけど、戻りたいんだけど…


「ッ…！ごめん、トド松っ…」
「わかってる。わかってるから…。ゆっくり、息吐いて？」

背中をさする手も愛しい人に似ている
身長も同じ、体格もさほど変わらない


何で私はカラ松なんだろう
カラ松じゃないとダメ？

……………カラ松じゃなかったらこんな思いしなくて済んだのに


「…カラ松兄さんじゃなかったらよかった、って思ってる？」
「！…え？何で…」


涙が教えてくれるものだよ？女の子の涙は感情の全てを表してるからね、と笑ったトド松を見上げる

「うん…思った。けど…それでも好きなの。好きだから仕方ないの」

好きに立派な理由なんて存在しない

そう言うと、悲しそうにそうだね、と言った


「…ねぇ、A…もしよかったら何だけど…」
「？」

ソファに腰掛けて私を見るトド松の目を見つめ返す


「カラ松兄さんとの出会い、教えてくれない？」



そして私はあの日に戻る＿＿＿＿＿＿

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