カラッポ【カラ松】

Thirty three episodes ページ36

「待たせたな、すまないhoney」
「いいえ。謝るなら蠧魚くんに。彼、かなり前から待ってたみたいよ？」


いえ、大丈夫です、と言った蠧魚くんは、弱井先生は？といつもの調子で訊いてきた


「あー…もうすぐじゃないかな？」
「Aー！ごめん、ちょっと遅れたー」
「ほらね」


遅いよー、と言うと、ごめんねー？と首を傾ける

可愛いからよしとしよう


「じゃ、行こっか。まだ電車には間に合うけど…どうする？」
「コーヒー買ってきてもいいかな？」
「いいですよ」


トト子がコーヒーを買いに行った


すごいスーツケースですね…とカラ松のスーツケースを見て固まっている蠧魚くん
なぜなら、カラ松のスーツケースはキラッキラと太陽の光を反射し、青色に輝いていたからだ


初めて見たときは私も引いた


「それ、引くでしょ？」
「なぜだ？」
「えぇ……引きますね。正直……」
「私もビックリしちゃったのよ。修学旅行にこれで来るもんだから…」


そう言えば、学校同じでしたね、と笑う蠧魚くん


「トト子も一緒よ？楽しかったなぁ……」


凄かったんだから、と苦笑してしまう

聞きたいです！と目を輝かせる蠧魚くんに、じゃあ電車の中で話してあげる、と言うと、余計なことは言わないでくれよ……と弱気になるカラ松


「いいえ、包み隠さず全部話すわ」
「六つ子の先生の生徒時代ですかー…なんか楽しそうですね！」
「楽しいも何も、毎日が非日常すぎて…」


お待たせ、とコーヒーを飲みながら歩いて来るトト子に、学生時代どうだった？と聞くと、まぁまぁかなぁ……と返ってきた

トト子からの答えだとしたら上出来かな


「チビ太って言うおでんすごく好きな子がいてね…」
「今、チビ太はおでん屋をしてるんだ！！」
「へぇ…信じ続ければ夢は叶いますね！」
「……えぇ」



叶わない、夢もあったりするけどね


そう頭の中で考える


電車に乗り込むと、四人席を取ったカラ松が、荷物を上げた


「おそ松はすっごい馬鹿だったんだけどね…英語だけは出来てて。発音もネイティブに近いし、聞き取りもうまいしで有名になったの。グレてたけど」
「それが今では英語科の教師」
「そんなこと言えば、俺もそうだぞ？古文以外何一つ出来なかったんだから」


そう言えば、とふと思い出す


「……十四松って、理科得意だったっけ？」
「確か…教科の中で一番苦手じゃなかったか？」
「世の中わからないものねー」


やっぱり面白いですね、と蠧魚くんが笑う

愛がなくても、楽しいときは楽しいだなんて、世の中腐ってるけどね

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