カラッポ【カラ松】

Nineteen episodes ページ22

ポタッと終わりがないほど流れ出る血
それを見つめるカラ松

綺麗だ、と呟いた声にカッとなってしまった

そして、理不尽な言葉をカラ松に浴びせかける


「……ぁ…」

そんなこと言っても無駄なのに


「ごめ、んなさっ……」
「…A…？」


悪気はない
でも、こんなこと言ってしまって申し訳ない


「っ…私、ごめんなさい！なんて言えばいいか…ほんと…」
「大丈夫だ。A、顔を上げてくれ」
「え…？」


頬を触るカラ松の大きくて暖かい手
それが、心の奥深くまで染み込んでいく気がして安心した

……こんな安心、何年振りだろう




「っ…ごめ…」
「謝らないでくれ。俺が何かしたみたいじゃないか。どうして泣いてるんだ？」


切った理由は聞かないのね、と頭の中で呟いた


「……私、辛いの…」


誰も私を守ってくれないから


そう言うと、フッと一瞬辛そうな顔をする


ねぇ、なんで？
どうして他人事なのにそこまで相手の気持ちに入り込めるの？

ねぇ、教えて？



「…大丈夫だ。A。今日から俺がお前のナイトになろう」
「…あはは、何言って……ぅ…」


優しい言葉は辛い


そこで、フッと頭に浮かんだのは精一杯の『好き』だった



「……カラ松…私、あなたが…」
「！………」



あ…



困らせてる




「あ、ごめんね！私の勝手な気持ちだからッ…今フッと思っただけだし…気にしないで……」



私の初めての恋は、呆気なかった





「あぁ、俺も……俺も、愛してるぞ」




今でも思い浮かぶ
まぶたの裏に鮮やかに浮かぶ


あなたの笑顔


あの頃から、あなたの『愛してる』は偽りだったね




「……もう、ダメなのかなぁ……」



私が精一杯想っても、叶わないのかな…？


その答えはただ一人しか知らない



「教えてよ、カラ松……」




そう呟いて、パタンと生徒帳を閉じた

今、昔のことを思い出していた



どうしてだろう


あの日と同じ、雨


少し肌寒い風がカーテンを揺らした



「……濡れちゃう」



床にすでに吹き込んできている雨が混じる風


窓を閉めに立ち上がって閉めにいくと、大きな風が吹いてきてカーテンを大きく揺らした

私の体を覆ってしまうほどのカーテンが覆いかぶさってきて抜け出すのに一苦労


カーテンって抜け出しにくい…




「なぁ、カラ松」


やっと抜け出せる頃合い
そんな声が聞こえた



「お前、Aのこと嫌いなの？」

明らかに、生徒会長の声だ


「いいや、俺は怖いんだ」

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