カラッポ【カラ松】

Fourteen episodes ページ16

「…………ごめん、一松。それは無理」
「……ッ……だったら、そんなこときかないでくれる」

だよね、と私も俯くと、一松は舌打ちをした

「Aって、昔からそうだよね…自分の悩みは誰にも打ち明けないのに、人の悩みにはズカズカ土足で上がり込んでさ…」
「ッ…そ、れ、は………」
「それにさ、クソ松にも嫌われてると思ってるくせにまだ好きって言い続けるし…」

正直うっとおしい、とハッキリ言う

そうかもしれない


カラ松のことは好きだけど、あっちは私のことが嫌いなのかもしれない
うっとおしいと言われるのは当たり前だ

幸せだって嘘ついて、愛しきれないとわかっているのに愛す

明日がないことも隠したくて


愛してるって言われて、私も好きだよ、と返す。嘘じゃない。嘘じゃないけど

それでも私は嘘をつく


「………私はカラ松に好きだって、言ってもらえる」
「A……？」


ギュッと手を握る
私なんか誰も愛さないと思っていたけど、カラ松が愛してくれた


たとえ、それが偽りでも、いいかもって思えて



「…………私だって、そうだよ…」
「A、ごめ………」


椅子から立って私の隣に座る一松

どうすればいいかわからないくて困ってるんだろう


…ごめん、一松。だから辛いんだよね


私は優しさを利用する




「…………………愛しきれないの？私は好きじゃないの？答えてよ、カラ松…」


愛してるぞ、なんて言葉何回も聞いた
その度に辛くなって、抉れていく私の心の行き場はどこ？
もう見つからないあの日を返して？



「好きだぞ、Aって、言ってくれてたじゃない……」

黙って私を抱き寄せる一松の心を私が抉る
私の心をカラ松が抉る

カラ松の心を抉っているのは…誰？


「教えてよ、私に…」



小さくA、と呟いた一松はそれ以上は何も言わなかった

「ごめんなさい、ごめん…ごめんね、一松……」
「…………ゴメンッ…」
「へ…？」


グイッと引き寄せられた体は次の瞬間にはソファーに転がっていた


「？一松っ…「ん……」んぅっ…！？」

やめてと言いたいけれど噛みつくように、でも悲しそうにキスをする一松に何も言えない
どうしてそんなに悲しそうなの？なんで私に想いを寄せるの？

私なんか誰にも愛されない、そう決められているのに


「一松…？」
「…あふことの、絶えてしなくば、なかなかに、人をも身をも、うらみざらまし…」
「…え…」


もしあの人と愛し合うことがなかったら、かえってあの人のつれなさや我が身の辛さを恨んだりしなかったでしょうに

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