UNDEAD ページ21
羽風先輩を軽音部部室へと連れていく道中も沈黙は気まずいなあ、と思っていたがそんな心配は無用だった。
「外での仕事は始めてだよね？どうだった？」
とか
「あそこの紅茶は『さくら時計』もいいよね〜！」
とか引き出すのが上手なのか店主さんのことやその他余計な雑談までしてしまった。あんず先輩が言っていたのはそういう事だったのだろうか？
と思い直し、しっかりとMCについても触れておいた。
「羽風先輩は会話がお上手ですよね」
「そうかな？」
「はい！MC、頼りにしてますね」
「MCも、ね」
ウィンクをする仕草は矢張りアイドルで自然だった。
「そうですね！女の子たちの心を掴んじゃいましょう」
言い慣れない、格好付けた様な文言は口から自然に出てくれる、とはいかなかったがそこまで不自然でもなかったのだろう。相槌が飛んでくる。
「うんうん」
「やる気になっていただいたところで…
ご指導ご鞭撻お願いしてもいいですかね…」
と言いつつ、いつの間にか着いていた軽音部の部室の扉を開ける。
え、と言う声を漏らしたのは羽風先輩。
そんな事は気にせずに、というか気にしたらここまで頑張って喋ったのが台無しだ…
と、思って開いた扉の先には。
UNDEADのメンバーが既に集まっていた。
羽風先輩を今回呼び出した目的であるMCの指導について話をすると
「めんどくさい〜朔間さんが何とかしてくれるんじゃないの〜」
と、言われてしまった。
なんで好き好んで男の相手とかしないといけない訳？との事で。
帰ろうとする羽風先輩を、せめて宣伝する商品のお話だけでもと引き留め、紅茶を淹れた。
序に、それについて感想を言い合ってみる事になった。
「あれ、こんな香りの売ってたっけ？」
オレンジがかったミルク色の液体の入ったカップを覗き込む先輩。
「これはライブに合わせて出す新作だそうです」
へぇ、今回は濃厚だねなんて言っている横で苦々しい顔の晃牙、呆れ顔の朔間先輩に無言の乙狩先輩。
「あまったりぃ…」
「これこれ、正直である事ばかりが良いこととは限らんと言ったじゃろ…」
肩を落とす朔間先輩を見かねたのか、羽風先輩が口を開く。
「…まぁ、晃牙くんというかUNDEAD自体、甘党で売ってる訳じゃないし、『甘いもの好きな人なら好きかもしれない』位のことを言えれば問題ないんじゃない？」
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2018年2月12日 13時
