眠りの王子に花束を。【朔間凛月誕】 (ページ9)

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結局折角来たというのに彼と目線が合うことも、彼が私の席の近くを通ることもなかった。来てくれたんだって気づいてくれてもいいでしょう、なんて少しばかり落ち込む。
帰ったらちゃんとライブに行ったんだよ、と連絡しないとなんてその先をことに頭が持っていかれるのは私の悪い癖。アンコールも終わり、一足先にペンライトの電源を切って溜息をついたとき。
そんな私をまた引き寄せたのはアンコール後の彼の声だ。

「ちゃんと来てる～？」

ハッとして顔を上げる。何が？誰が？なんて、よくわからない言葉を突然発した彼に困惑する人も少々。

それが私に向けられた言葉なのかは自信がなかったのだけど、彼と目線が合ったその数秒後、

私に向けられた彼の指に彼の声。

「来てくれてありがとう」

「すきだよ～！」

あまりにも突然で、あまりにも大胆なものだった。
一層熱気を増し、ファンサと捉え叫ぶファンの中、こんなにも赤面しているのは多分私だけ。
そんな私の顔を見て満足ですとでも言うように舌を出して悪戯っぽく笑った彼がステージ裏に戻っていく。

「 ……っ、馬鹿野郎」

やられた、他の人にバレないように必死に顔を隠す。会場の中が薄暗くて本当に良かったと安堵しながらも、彼の声を思い出してはまた勝手に頬が緩む。
早く帰って凛月に言ってあげたい、私だってだいすきだ。

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